FtMの妊活ガイド|セルフシリンジ法の方法などを当事者が実体験をもとに解説

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この記事を書いた人

鎌田のアバター 鎌田 GIDラボ共同代表

1994年北海道生まれ。中3で診断、17歳でホルモン治療開始、19歳で胸オペ、22歳で内摘・戸籍変更。現在は完全埋没で、妻と娘と暮らしている。自身の経験から「当事者に本当に必要な情報が一箇所にない」と感じ、GIDラボを立ち上げる。

子どもをもちたいと思ったとき、「自分たちにはどんな方法があるのか」と調べるところから始まる方は多いと思います。

FtMカップルの妊活については、まとまった情報が少なく、どこに相談すればいいか、何から準備すればいいかが分からないまま時間だけが過ぎていくこともあります。筆者自身もそうでした。検索しても体験談は断片的で、情報をつなぎ合わせながら準備を進めた記憶があります。

この記事では、FtMカップルが子どもをもつためのおもな選択肢を整理し、筆者が実際に選んだセルフシリンジ法のやり方・準備・体験談を中心に解説します。

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目次

FtMカップルが子どもをもつための主な選択肢

FtMカップルが子どもをもつ方法は一つではありません。まずはどのような選択肢があるのかをご紹介します。

セルフシリンジ法

針のないシリンジ(注射器)を使い、精子をパートナーの膣内に注入する方法です。医療機関を介さず自宅で行えるため、プライバシーを守りながら自分たちのペースで進められる点がメリットです。

費用を抑えやすい一方、衛生管理や精子提供者との関係の整理は自己責任となります。

鎌田

私はこの方法で子どもを授かりました。

医療機関での人工授精(AID)

医療機関で精子提供を受けて人工授精を行う方法です。精子バンクを通じた匿名提供が多く、衛生管理や医師のサポートが受けられます。

ただし、FtMカップルへの対応可否は医療機関によって異なるため、事前の問い合わせが必要です。

費用は医療機関によって異なりますが、1回あたり数万円程度かかるケースがあります。AIDに関する基本的な情報は日本産婦人科医会の解説ページを参考にしてください。

顕微授精・体外受精(IVF-D)

提供精子を使った体外受精・顕微授精です。専門的な生殖補助医療が必要となり、費用・身体的負担ともに大きくなります。

対応できる医療機関は限られており、FtMカップルへの対応状況は機関によって異なります。

特別養子縁組・里親

血縁にこだわらない形で子どもと家族になる方法です。手続きや要件は各自治体・機関によって異なります。

児童相談所全国共通ダイヤル(0120-189-783)に電話すると最寄りの児童相談所を案内してもらえます。制度の概要は政府広報オンラインでも確認できます。

方法ごとの費用感と特徴の比較

スクロールできます
方法費用感メリット注意点
セルフシリンジ法1回あたり数百円〜1,000円程度自宅で進めやすい・費用を抑えやすい衛生管理・提供者との関係整理が必要
AID(人工授精)1回あたり数万円程度(施設による)医療機関で進められる対応施設が限られる
IVF-D(体外受精)数十万円以上になることもある医療的管理のもとで進められる費用・身体的負担が大きい
特別養子縁組・里親制度により異なる血縁に限らない家族形成要件・手続き・審査がある

どの方法を選ぶかはパートナーとの話し合いや身体の状況、費用、精神的な準備、法的な整理など、複数の要素を考慮したうえで決めることになります。

セルフシリンジ法とは

セルフシリンジ法とは、採取した精子をシリンジとカテーテルを使って膣内に注入する方法です。

道具の使い方はシンプルですが、排卵日の把握や精子の鮮度管理、実施後の安静など、いくつかのポイントを押さえることが重要です。

必要な道具はシリンジキットとして通販で入手できます。タイミング法と人工授精の中間に位置するイメージで、医療機関へのアクセスが難しい方や、プライバシーを重視したい方に選ばれることがあります。

セルフシリンジ法を始めるための準備

STEP 1|パートナーとしっかり話し合う

妊活を始める前に、パートナーと十分に話し合っておくことが大前提です。確認しておきたいおもな点は以下です。

  • セルフシリンジ法で進めることへのお互いの同意
  • 精子提供者を誰にするか(知人・親族・第三者)
  • どのくらいの期間を目安に取り組むか
  • 妊活がうまくいかなかった場合の気持ちのすり合わせ
  • 生まれた子どもに、将来いつ・どのように経緯を伝えるか

最後の「出自を知る権利」の問題は、近年注目されているテーマです(日本生殖医学会)。

鎌田

精子提供で生まれた子どもが大人になってから「自分はどのようにして生まれたのか」を知りたいと思う権利については、事前に話し合っておくことをおすすめします。

STEP 2|精子提供者に協力を依頼する

精子提供者の選び方については、慎重に進めることが必要です。

知人・親族に依頼する場合の注意点
  • 提供することへの十分な説明と同意を得ること
  • 同意の記録を残しておくこと(メール・LINEの記録、または書面)
  • 将来的な親権・認知・養育費に関する誤解が生じないよう、事前に取り決めを明確にしておくこと

とくに親権・認知・養育費については、提供者と提供を受ける側で後からトラブルになるケースがあります。詳細な取り決めが必要と感じる場合は、弁護士など法律の専門家に相談してください。

インターネット上での精子提供について

SNSや掲示板を通じた精子提供については、提供者の健康状態・目的・人物像が確認しにくく、リスクを伴うケースがあります。

厚生労働省も生殖補助医療における第三者提供の条件整備について議論しており、個人間の精子提供には法的・安全面での未整備な部分があります(厚生労働省・生殖補助医療に関する資料)。

鎌田

安易に利用することは避け、慎重に判断してください。

STEP 3|排卵日を確認してスケジュールを調整する

シリンジ法の成否に大きく影響するのが、排卵日の把握です。基礎体温の記録と排卵検査薬を組み合わせて確認するのが現実的です。

  • 基礎体温
    毎朝同じ時間に測定し、低温期・高温期の変化を記録する。最低3か月程度継続すると傾向が見えやすくなる
  • 排卵検査薬
    排卵日が近いほど陽性反応が強くなるため、タイミングをより正確に把握できる
  • ルナルナなどのアプリ
    基礎体温の記録・グラフ管理・排卵日予測をまとめて行える

提供者と自分たち双方のスケジュールを合わせる必要があるため、排卵予定日が近づいたら早めに連絡・調整しておくと余裕が生まれます。

セルフシリンジ法のやり方【手順】

準備が整ったら、以下の手順で進めます。採精から安静まで含めて1〜2時間程度が目安です。

手順内容ポイント
1提供者に採精してもらう採取後は清潔な状態を保ち、できるだけ早めに使用する
2採取後10〜15分待つ精子が液状になるまで待つ
3シリンジで精子を吸引する清潔な状態で行う
4カテーテルを膣内に挿入してゆっくり注入する奥まで届くよう優しく挿入する
510〜30分以上、仰向けで安静にする腰の下にクッションを入れて少し高くするのもおすすめ

セルフシリンジ法に必要なもの

シリンジキット【必須】

シリンジ・カテーテル・採精カップがセットになったキットです。AmazonやドラッグストアのEC、専門の通販サイトで入手できます。

1セット10〜20回分で8,000〜10,000円程度が相場です(1回あたりの費用は400〜1,000円程度)。評価数が多く使用方法の説明が丁寧なものを選ぶとよいです。

鎌田

排卵予定日の前に余裕をもって用意しておくと、当日慌てずに済みます。

基礎体温計【必須】

小数点以下2桁まで計測できる婦人体温計が必要です。価格は2,000〜4,000円程度が一般的です。

アプリ連携できるタイプを選ぶと記録の負担を減らしやすく、毎日続けやすくなります。妊活を始める前から最低3か月は測定を継続しておくと、自分の周期の傾向が把握しやすくなります。

排卵検査薬【推奨】

排卵日前後に尿中のLHホルモンの濃度が高まることを検知する検査薬です。基礎体温だけではタイミングが読みづらい場合に役立ちます。

シリンジ法では提供者のスケジュールと実施日を合わせる必要があるため、事前に排卵日を把握しておくと調整がしやすくなります。

妊娠検査薬【推奨】

シリンジ法自体には必要ありませんが、実施後の確認のために準備しておくと安心です。

生理予定日の1週間以降を目安に使用します。

鎌田

チェックワン・クリアブルーなどが代表的な製品です。

精子提供者の選び方と法的な注意点

精子提供者を誰にするかは、妊活の中でも慎重に考えるべきテーマです。

提供者の選択肢と注意点

知人・友人・親族に依頼する場合、信頼関係があることがメリットですが、将来的な関係性の変化も考慮する必要があります。医療機関(AID)を利用する場合は精子バンクを通じた提供となり、衛生面の管理が確保されています。

SNS・掲示板での第三者については、先述のとおりリスクが伴います。

事前に確認・整理しておきたいこと

  • 親権・認知について
    精子提供者が「認知」した場合、法律上の父親になります。提供者に認知を求める・求めないについて、双方の合意を明確にしておく必要があります。
  • 養育費について
    認知が発生した場合、提供者に養育費を求める法的根拠が生じる可能性があります。双方の意向が合致しているかを確認し、書面で残しておくことをおすすめします。
  • 出自を知る権利について
    生まれた子どもが将来「自分はどのようにして生まれたのか」を知りたいと思う権利については、国際的にも議論が続いています。将来どのように説明するかも、事前に話し合っておくとよいでしょう。
  • 金銭の授受について
    精子提供に対して金銭が発生する場合は、契約書の作成など慎重な対応が必要です。
鎌田

法的な詳細については、弁護士や生殖補助医療の専門家に相談することをおすすめします。

実体験|セルフシリンジ法で妊娠に至るまでの記録

ここからは筆者がセルフシリンジ法を実施し、パートナーが妊娠に至るまでの流れを紹介します。

あくまで個人の体験であり、同じように試みても結果が異なることは十分あります。参考の一例として読んでいただければ幸いです。

半年前から基礎体温の記録を開始

妊活を意識する半年ほど前から、パートナーが毎朝基礎体温を記録し始めました。ルナルナアプリと婦人体温計を使い、低温期・高温期のグラフを継続的につけることで、排卵日の予測がしやすくなりました。

記録が蓄積されるほど予測精度が上がる感覚がありました。

鎌田

最初の1〜2か月は傾向がつかみにくかったですが、3か月を過ぎたあたりから周期のパターンが見えてきました

弟への依頼

精子提供については、以前から「いずれお願いするかもしれない」と伝えていた実の弟に協力をお願いしました。

排卵予定日が近づいてきたタイミングで改めて連絡し、会って話し合いの機会をもちました。セルフシリンジ法という方法があること、精子提供をお願いしたいこと、子どもとの関係についての考え方を説明して了承を得ました。

同意を得るまでにとくに大きなトラブルはありませんでしたが、親族への依頼には「血縁関係がある精子提供者から生まれた子どもをどう育てるか」という問いが伴います。

鎌田

弟とのコミュニケーションをしっかりとっておき、妻との間でも事前にしっかりと話し合って進めました。

シリンジキットの準備

準備が整ったタイミングで通販でシリンジキットを購入しました。

キットにはカテーテル・シリンジ・採精カップ・説明書が含まれており、使い方はシンプルでした。

箱を開けたときの緊張感は今でも覚えています。当日に慌てないよう、事前に内容を確認しておいたことで、落ち着いて進められました。

排卵日前後に3日間連続で実施

排卵予定日が確定したタイミングで、排卵日の2日前から3日間連続で実施しました。

弟に自宅まで来てもらい採精してもらい、私たち夫婦は採精中に一時的に外出、連絡を受けて戻り、その後シリンジ法を実施するという手順でした。

鎌田

妻に注入後は腰の下にクッションを入れ、仰向けのまま30分以上安静にしてもらいました

妊娠の確認

シリンジ法の実施から約3週間後、生理がこないことと基礎体温が下がらないことから妊娠の可能性を感じ、妊娠検査薬を使用したところ陽性でした。その後、産婦人科で妊娠が正式に確認できました。

私たちの場合は幸運なことに1周期目で妊娠に至りましたが、これはあくまで一例です。排卵日の予測の精度、精子の状態、身体の状況など、妊娠に影響する要素は多く、同じように試みても結果が異なることは十分あります。

妊活には時間がかかることを前提に、焦らず続けることが大切だと感じています。

セルフシリンジ法を継続するうえで意識したいこと

実体験をふまえて、継続するうえで意識しておきたいポイントをまとめます。

ポイント内容
排卵日の把握基礎体温+排卵検査薬を組み合わせる。記録は継続するほど精度が上がる
連続実施排卵前後の複数日に実施できると機会が増える
注入後の安静10〜30分以上、腰を高くして仰向けで安静にする
精子の鮮度採取後は時間を空けすぎず、できるだけ早めに実施する
ストレス管理結果に焦りすぎず、生活リズムを整えることも大切

よくある質問

セルフシリンジ法の成功率はどのくらい?

個人差が大きく、公的なデータとして確立された数値はありません。排卵日の特定精度、精子の状態、パートナーの身体の状況など、さまざまな要因が影響します。

クリニックでのサポートを求めたい場合は、AIDなどの医療機関を検討することも選択肢です。

精子提供者は親族でなくてもいい?

親族でなくても構いませんが、第三者への依頼には提供者の同意・法的な整理・健康状態の確認など、より慎重な対応が必要です。

将来的なトラブルを避けるため、同意書の作成や弁護士への相談も検討してください。

日本でセルフシリンジ法は違法?

現時点では、自宅でのセルフシリンジ法を直接禁止する法律はありません。

ただし、法整備が追いついていない部分もあり、今後制度が変わる可能性があります。精子提供者との間での金銭の授受や法的な関係性については、専門家に確認することをおすすめします。

鎌田

本記事は法的なアドバイスではないため、具体的な判断については弁護士などにご相談ください。

ホルモン治療中でも妊活できる?

パートナーが妊娠を目指す場合、FtM本人のホルモン治療はパートナーの妊娠に直接影響しません。

AIDを検討したい場合はどこに相談すればいい?

生殖補助医療を行う産婦人科・不妊治療クリニックに問い合わせてください。FtMカップルへの対応状況は医療機関によって異なるため、事前に確認することが必要です。

特別養子縁組・里親はどこに相談する?

児童相談所全国共通ダイヤル(0120-189-783に電話すると最寄りの児童相談所を案内してもらえます。要件・手続き・期間などは状況によって異なるため、まずは問い合わせてみることをおすすめします。

鎌田

政府広報オンラインでも制度の概要を確認できます。

まとめ

FtMカップルが子どもをもつ方法は、セルフシリンジ法・人工授精(AID)・体外受精・特別養子縁組・里親など複数あります。どれが自分たちに合うかは、身体の状況、費用、精神的な準備、精子提供者との関係、法的な整理など、さまざまな要素をふまえて考えることになります。

セルフシリンジ法は費用・プライバシー・ペースの面でメリットがある一方、衛生管理・排卵日の把握・精子提供者との関係の整理は自己責任で行う必要があります。精子提供者との認知・親権・養育費・出自を知る権利については、事前に話し合い、必要に応じて専門家に相談してください。

筆者の体験が少しでも参考になれば幸いです。妊活には時間がかかることもありますが、一歩ずつ進んでいただければと思います。

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本記事は個人の体験に基づく情報提供を目的としており、医学的・法的なアドバイスではありません。妊活を始める際は、必要に応じて医療機関・弁護士などの専門家にご相談ください。

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