性同一性障害の診断書は、性別違和の診療に対応した精神科やジェンダークリニックでもらえます。何回通うか・いくらかかるかは病院ごとに違い、何に使うかで必要な書類も変わります。特に戸籍の性別変更には「2人以上の医師の一致した診断」が必要です。
「どこでもらえるの?」「何回くらい通えばいい?」「即日でもらえる?」と調べている方も多いと思います。この記事では、診断書をもらうまでの流れと、費用・期間の目安、即日発行やオンライン診療の注意点をまとめました。筆者自身が北海道から東京のジェンダークリニックまで通って診断を受けた経験も、あわせて紹介します。
なお、「性同一性障害」は日本の法律などで今も使われている名称で、WHOの国際疾病分類(ICD-11)では「性別不合」という名称が使われています。この記事では、検索で使われることの多い「性同一性障害」を中心に書いています。病気としての説明は性同一性障害(性別不合)とは?で解説しています。
※この記事は情報提供を目的としたもので、特定の医療機関を勧めるものではありません。料金や受け入れ状況は変わることがあるため、必ず各医療機関に確認してください(2026年11月時点の情報)。
この記事のポイント
- 診断書は、性別違和の診療に対応した精神科やジェンダークリニックでもらえる
- 診断までの回数・期間や費用は一律ではない。初診当日の発行やオンラインでの取得も、病院への確認が必要
- 何に使うかで必要な書類が変わる。戸籍変更には「2人以上の医師の一致した診断」が必要

| 使う目的 | 必要な診断・書類 | 確認先 |
|---|---|---|
| 学校・職場への配慮 | 診断書が必要かどうかも含め、提出先によって違う | 学校・職場 |
| ホルモン治療・胸オペ・性別適合手術 | 診断とは別に、治療に進めるかの判断がある。ガイドラインに沿う病院では、原則2名の専門家の意見書が必要 | 治療を受ける病院 |
| 戸籍の性別変更 | 2人以上の医師の一致した診断と、決められた事項を書いた診断書(2人の連名1通でも可) | 家庭裁判所 |
まずは、診断書を出す先が「何を求めているか」を確認しておくと、病院選びで迷いにくくなります。
性同一性障害の診断書はどこでもらえる?
何科を受診する?精神科・ジェンダー外来でもらえる
診断書は、性別違和(性同一性障害・性別不合)の診療をしている精神科やジェンダークリニック(ジェンダー外来)でもらえます。日本精神神経学会のガイドラインでは、診断は精神科専門医、またはそれと同等の経験があると学会が認めた医師が行うとされています。
婦人科や泌尿器科、美容クリニックは、体の検査やホルモン治療・手術が中心です。性別違和の診断そのものは精神科医が行うので、まずは性別違和の診療をしている精神科(ジェンダー外来)を探しましょう。
ただし、精神科ならどこでも診断書を出してくれるわけではありません。予約の前に、ホームページや電話で「性別違和の診療をしているか」「必要な診断書を書いてもらえるか」を確認しておくと安心です。専門の病院は数が少なく、初診の予約が先まで埋まっていることもあるので、早めに問い合わせておくのがおすすめです。
東京・大阪で診断書をもらえる病院の例
対応している病院は都市部に多く、地方では選択肢が限られます。筆者も北海道に住んでいましたが、手術に向けた診断は東京のはりまメンタルクリニックまで飛行機で通って受けました。
GIDラボの病院データベースで「診断書発行」に対応と登録している病院から、東京と大阪の例を紹介します。新しい患者の受け付けを止めていることもあるので、受診前に必ず各病院の公式サイトで確認してください。
| 地域 | 病院(GIDラボの病院データベース) |
|---|---|
| 東京都 | はりまメンタルクリニック ちあきクリニック こばやしクリニック 国立精神・神経医療研究センター病院 慶應義塾大学病院 精神・神経科 |
| 大阪府 | 大阪大学医学部附属病院 精神科 関西医科大学附属病院 精神神経科 大阪府済生会泉尾病院 ジェンダー外来 |
ほかの地域の病院は、病院検索で都道府県や対応内容から探せます。
性同一性障害の診断書のもらい方【5ステップ】

①病院を予約する
多くのジェンダークリニックは予約制です。予約するときに、次のことを確認しておきましょう。
- 性別違和の初診・診断書の発行に対応しているか
- 欲しい用途(ホルモン治療、手術、戸籍変更、学校への提出など)の診断書を書いてもらえるか
- 提出先が指定する書式や記載事項に対応できるか
- 紹介状や、事前に提出する資料が必要か
- 初診料・検査料・診断書料と、発行までの期間
問い合わせるときは、たとえば「戸籍変更に使う診断書が必要です。初診から発行までの流れと、おおよその費用・期間を教えてください」と伝えると話が早いです。
病院によっては、受診前にこれまでの経緯をまとめて送るよう求められます。たとえば大阪府済生会泉尾病院のジェンダー外来では、予約の際にジェンダーヒストリー(これまでの経緯)をメールで送ることになっています。
鎌田私が手術に向けて東京のクリニックを受診したときも、事前に「自分史」を書いて持ってきてくださいと言われました。いつから違和感があったか、家族や学校でどう過ごしてきたかを時系列で書いておいたので、診察でもこれまでの経過を伝えやすかったです。ただ、最初からすべてを整理して話せなくても大丈夫です。
②初診で問診を受ける
初診では、医師がこれまでの経過をじっくり聞き取ります。たとえば、次のようなことを確認される場合があります。
- いつごろから自分の性別に違和感があったか
- 子どものころの様子や、周りからどう言われていたか
- 家族構成や、家族・周囲に伝えているか
- 今の生活で困っていること、今後考えている治療や手続き
子どものころの遊びや服装だけで、性自認が判断されるわけではありません。



うろ覚えですが、いつから違和感があったか、親や周りから何か言われたことはあるか、といったことを聞かれました。意外だったのは、家族構成など家族のことを細かく聞かれたことです。
③必要な診察・検査を受ける
ガイドラインでは、必要に応じて体の状態を確認する診察や検査についても説明されています。たとえばホルモン検査や染色体検査、婦人科・泌尿器科での診察などです。ただし、すべての検査を受ける必要があるわけではありません。
また医師は、性別の違和感と、ほかの心身の状態とを分けて丁寧に評価します。初診だけで十分な情報がそろわない場合は、追加の診察が行われることもあります。
④診断結果と、診断書の使い道を確認する
診断がついたら、何に使う診断書なのかを医師に伝えて、必要な書類を相談します。戸籍の性別変更に使う診断書には、生活歴や診断の根拠、受診歴、治療の経過など、決められた記載事項があります。通常の診断書とは違うので、戸籍変更用であることを伝えましょう。
なお、2023年の最高裁決定を受けて、戸籍変更用の診断書には当面の間、現在の生殖腺機能について書かなくても差し支えないとされています(法務省・厚生労働省の事務連絡)。戸籍変更の条件や手続きは戸籍の性別変更とは?で解説しています。
⑤診断書を発行してもらう
最後に診断書を申し込みます。書類の種類によって料金や、できあがるまでの日数が違うので、受け取り方法(窓口・郵送)とあわせて確認しましょう。



私は当時、手術や戸籍変更に向けて何通か診断書をもらいました。正確な枚数や金額は覚えていませんが、1通あたり1万5,000〜2万円くらいだった記憶があります。あくまで当時の個人的な経験で、今の費用とは違う場合があります。
受診前に準備しておくもの
初診の前に次のものを用意しておくと、診察がスムーズに進みます。
- 健康保険証(マイナ保険証)
- 自分史(いつから違和感があったか、子どものころや学校・家族とのことを時系列でまとめたメモ)
- 紹介状(病院から求められた場合)
- これまでに受けた治療や検査の記録、お薬手帳
- 提出先から指定された診断書の書式(戸籍変更用など)
自分史は、うまく書けなくても大丈夫です。思い出せることを箇条書きにしておくだけでも、医師に伝えるときの助けになります。
性同一性障害の診断書の費用は?保険は使える?
診察料・検査料・診断書料の目安
診断書をもらうまでにかかるお金は、大きく分けて「診察料(初診・再診)」「検査料」「診断書料(文書料)」の3つです。料金は病院ごとに違うので、公式サイトで確認できた例を紹介します。


| 病院 | 料金の例(税込) |
|---|---|
| 自由が丘MCクリニック(東京) | 戸籍変更用診断書:1st 33,000円/2nd 11,000円 性染色体検査:3割負担の場合10,500円 (2026年1月現在の掲載料金) |
| 大阪府済生会泉尾病院 ジェンダー外来 | 初診11,000円、再診5,500円(自費) |
保険が使えるもの・使えないもの
診察や検査に健康保険が使えるかどうかは、診療の内容や保険適用の条件によって違います。泉尾病院のように、性別違和の診療を自由診療(自費)にしている病院もあるので、予約時に確認しましょう。
また、診断書の文書料は通常、保険とは別に自己負担です。戸籍変更用の診断書を、一般的な診断書より高く設定している病院もあります。
診断書は何回の受診でもらえる?期間の目安
何回通えば診断がつくか、何か月かかるかについて、ガイドラインに具体的な決まりはありません。初診の評価で判断できる場合もあれば、追加の診察や検査が必要になる場合もあります。
また、「診断がつくまでの期間」と「診断書ができあがるまでの日数」は別です。急いでいる場合は、両方を予約のときに確認しておきましょう。



私の場合は、ガイドラインとは違う順番で治療を始めていて、すでに治療が進んだ段階で手術に向けた診断を受けたため、受診は1回でした。誰でも1回で診断を受けられるという意味ではありません。治療の進め方は、医師と相談しながら決めるのが安全です。
診断書は即日発行できる?オンラインでももらえる?
初診当日にもらえるとは限らない
初診の日に診断書を受け取れるかどうかは、必要な診察・評価が終わっているか、病院の発行体制などによって違います。即日発行を希望する場合は、予約の前に対応できるかを確認しましょう。
オンライン診療でもらうときの注意点
オンライン診療に対応しているクリニックもありますが、初診からオンラインで受けられるか、検査や対面の診察が必要か、診断書を郵送してもらえるかは病院ごとに違います。手術を受ける病院や家庭裁判所など、提出先の条件に合っているかも確認しておきましょう。
中学生・高校生など未成年でも診断書はもらえる?
未成年でも、性別違和について受診・相談できる病院はあります。ただし、保護者の同意や同伴を求められることがあるので、予約のときに確認しましょう。
なお、診断と治療は別です。日本精神神経学会のガイドラインでは、ホルモン療法は原則18歳以上(一定の経過観察などを経て、15歳以上で始められる場合あり)、乳房切除術や性別適合手術は18歳以上とされています。
学校生活で困っている場合は、診断書がなくても、まず学校(担任や保健室の先生など)に相談できます。



私は中学3年生のとき、地元の病院で、診断が確定する前の段階の書類を書いてもらって学校に相談し、学校生活で配慮してもらいました。正式な診断には時間がかかることもあります。学校で困っていることがあれば、診断書がなくてもまずは学校に相談できますし、必要に応じて医師にも相談してみてください。
診断書がすぐにもらえないのはどんなとき?
受診しても、すぐに診断書が出ないことがあります。よくあるのは次のようなケースです。
- 受診した病院が性別違和の診療や、その用途の診断書に対応していない
- 診断に必要な評価がまだ終わっていない(初診だけでは判断できない)
- ほかの心身の不調があり、その評価や治療を先に行う
- 提出先が指定する書式や記載事項に、病院が対応していない
- 未成年で、保護者の同意が得られていない(病院の方針による)
もらえなかったときは、理由と、これから何が必要かを医師に確認しましょう。対応していない病院だった場合は、性別違和を専門にしている病院を探し直すのが近道です。
性同一性障害の診断書に関するよくある質問
- 診断書は初診の日にもらえますか?
-
必ずしももらえるとは限りません。必要な評価が終わっているかと、病院の方針によります。急ぐ場合は予約時に確認しましょう。
- 診断書をもらうには何回通院が必要ですか?
-
全国共通の回数は決まっていません。初診の評価で判断できる場合もあれば、追加の診察や検査が必要な場合もあります。
- 精神科医2人の診断が必ず必要ですか?
-
何に使うかによります。診断そのものは精神科医1人でも可能です。ガイドラインに沿ってホルモン治療や手術に進む場合は原則2名の専門家の意見書が必要で、戸籍変更には法律で「2人以上の医師の一致した診断」が求められます。
- 診断書はオンライン診療だけでもらえますか?
-
病院の対応と、診察の内容によります。対面の診察や検査が必要になることもあります。
- 診断書があれば、すぐにホルモン治療を始められますか?
-
診断書だけで決まるわけではありません。治療する医師が、体の状態やリスクを確認したうえで判断します。ホルモン治療については男性ホルモン注射・女性ホルモン注射の記事で解説しています。
- 診断書の費用は1枚いくらですか?
-
病院や書類の種類によって違います。公式サイトで確認できた例では、戸籍変更用の診断書が1通目33,000円・2通目11,000円(自由が丘MCクリニック)でした。診察料や検査料は別にかかります。
- 診断書に有効期限はありますか?
-
一律の有効期限は決まっていません。ただし、提出先が「発行から○か月以内」などと指定していることがあります。提出先に確認しましょう。
- 前にもらった診断書は、戸籍変更に使えますか?
-
戸籍変更用の診断書には決められた記載事項があり、治療の経過も書く必要があります。前の診断書が使えるかは、家庭裁判所と作成した医師に確認しましょう。
まとめ|診断書が欲しいときは、使い道を決めて対応病院を探そう
- 診断書は、性別違和の診療をしている精神科やジェンダークリニックでもらえる
- 何に使うかで必要な書類が変わる。戸籍変更は2人以上の医師の一致した診断が必要
- 回数・期間・費用は病院ごとに違うので、予約のときに確認する



受診前に自分史をまとめておくと、初診で落ち着いて話せます。不安なことは予約の時点で病院に聞いてしまうのがおすすめです。
自分に当てはまるか気になる方は、自己理解の参考として性同一性障害の無料診断テストもあります(医療上の診断ではありません)。手術の全体像は性別適合手術とは?で解説しています。
【参考情報】



