FtMのパスグッズとは【まず結論】
パスグッズ=男性として自然に見えるための補助アイテム
パスグッズとは、FtMやトランスマスキュリンの方が男性として日常生活を送るうえで「自然に見える」ことを助けてくれるアイテムの総称です。
胸を平らに見せるトラシャツ(ナベシャツ)、下半身のシルエットを整えるエピテーゼ(パッカー)、立って排尿するためのSTPなどが代表例です。
ホルモン療法や手術と違って、体への侵襲がなく、買ったその日から使えるのが大きなメリット。
外出時の不安を減らし、鏡の中の自分に少し安心できるようになる、そんな存在です。
困っている場面から選ぶのが正解
パスグッズ選びで失敗する最大の原因は「とりあえず全部揃えよう」としてしまうことです。
アイテムはたくさんありますが、自分が一番つらいと感じている場面をまず特定しましょう。
その課題を解決する1つのグッズから始めるのがもっとも効率的です。
以下が代表例です。
- 「シャツを着たとき胸が目立つのがつらい」=トラシャツ
- 「男性用トイレが使えない」=STP
- 「ズボンのシルエットが気になる」=パッカー
困りごとベースで選ぶと、最初の1つで驚くほど気持ちが楽になります。
すべて揃える必要はない
パスグッズはあくまで道具であり、「持っていなければ男性として認められない」というものではありません。
トラシャツだけで十分だと感じる方もいれば、何も使わずにスタイリングだけで過ごしている方もいます。
ご自身が快適で安心できる範囲で取り入れれば、それで十分です。
この記事を参考に、必要なものだけピックアップしてくださいね。
まず優先度が高いパスグッズ(効果が出やすい順)
「何から手をつけたらいいか分からない」という方のために、多くのFtMの方が実際に効果を実感しやすい順にグッズを並べます。
胸をフラットにする(トラシャツ・テーピング)
最も多くの方が最初に手に取るのがトラシャツです。
胸の膨らみを圧縮して平らに見せるベストタイプのインナーで、着用するだけでTシャツ姿の印象がガラッと変わります。
即効性とインパクトの大きさでは断トツの1位です。
もう一つの方法がテーピング。
トランス用の専用テープで胸を脇方向に引っ張って固定します。
トラシャツよりも自由度が高く、Vネックや水着にも対応できるのが強みですが、肌への負担が大きいため使い方には注意が必要です。
服のシルエットを整える(体型補正インナー)
トラシャツで胸は平らになっても、ウエストのくびれやヒップの丸みが残っていると全体のシルエットが女性的に見えてしまうことがあります。
体型補正インナー(メンズ向けの加圧シャツやボディシェイパー)を併用すると、上半身が直線的に見え、服の上からの印象がさらに男性的になります。
必須アイテムではありませんが、特にスーツやシャツスタイルで過ごす方にとっては大きな味方です。
下半身の違和感を減らす(エピテーゼ・パッカー)
ズボンの股間部分に自然な膨らみを作るエピテーゼ(パッカー)は、見た目の安心感を底上げしてくれるアイテムです。
特にスリムなパンツやスーツを穿く場面では、膨らみの有無がシルエットの説得力を左右します。
パッカーの選び方や固定方法の詳細については、エピテーゼ専門の記事でくわしく解説していますので、こちらもあわせてご覧ください。
トイレの不安を減らす(STP)
STP(Stand To Pee)は立ったまま排尿するための器具です。
男性用トイレの小便器が使えるようになると行動の自由度がぐっと上がりますが、使いこなすにはある程度の練習が必要です。
最初の1つとしてはハードルが高いため、トラシャツやパッカーに慣れてからステップアップするのが現実的な順序です。
場面別|困りごとから選ぶパスグッズ
日常のどんな場面で困っているか。ここから逆引きすると、必要なグッズが見えてきます。
職場・学校(シャツ・制服で胸が目立つ)
ワイシャツや学校の制服は体のラインが出やすく、トラシャツなしでは胸の膨らみが目立ちやすい場面です。
フルレングスのトラシャツ(肩から腹部まで覆うタイプ)を着用し、その上にワンサイズ大きめのシャツを選ぶと、かなりフラットに見えます。
さらに、暗めの色のインナーを重ねると陰影で膨らみが目立ちにくくなります。
冬場はジャケットやカーディガンの上着でカバーしやすいですが、夏場は薄着になるぶん工夫が求められます(夏の対策は次の項目で)。
夏(汗・蒸れ・ニオイ対策)
夏はパスグッズとの付き合い方がもっとも難しくなる季節です。
トラシャツは通気性が低く、汗で蒸れやすくなります。
基本対策として、
- メッシュ素材や吸汗速乾タイプのトラシャツを選ぶ
- 制汗スプレーをこまめに使う
- 帰宅後すぐに脱いで肌を休ませる
などを意識して着用してみましょう。
パッカーも汗ですべりやすくなるため、コーンスターチベースのパウダーが必須になります。
真夏は「多少バレるリスクを取ってでも体の安全を優先する」という判断も大切です。
熱中症や皮膚トラブルを起こしては元も子もありません。
運動・スポーツ(ズレ・圧迫対策)
激しい運動中にトラシャツを着けるのは、呼吸が制限されるため基本的にはおすすめしません。
代わりにスポーツ用の圧迫力が弱めのトラシャツや、トランスブランドが出しているアクティブ用のトップスを選ぶと安全に運動できます。
パッカーは軽量・小型のものを専用ポケット付き下着に入れるのが安定します。
ジョギングや球技など動きの大きいスポーツでは、パッカーを外して臨むのも合理的な選択です。
トイレ(立って排尿したい)
男性用トイレの小便器を使いたい場合はSTPが必要になります。
ただし、STPは慣れるまで漏れのリスクがあるため、まずは個室トイレで練習を重ね、自信がついてから小便器に移行するのが無難です。
職場や学校で個室を使い続けるという選択もまったく問題ありません。
「立って排尿できること」はパスの必須条件ではなく、あくまで選択肢の一つです。
温泉・更衣室(視線対策)
肌が見える場面は最もハードルが高いシチュエーションです。
胸オペ済みの方はトラシャツ不要ですが、未手術の方はテーピングでフラットにする方法があります。
ただし、テープが見えると不自然になるため、肌色のテープを使い、テープの端を目立たないよう処理することが大切です。
下半身は、肌色に近いパッカーを医療用接着剤で固定する方法が最もバレにくいです。
ただし、お湯で接着が弱まるリスクがあるため、貸切風呂や個室サウナを利用するのも賢い選択です。
無理をせず、自分が安心できる環境を選んでくださいね。
恋愛・性の場面(見た目・機能)
パートナーとの親密な場面で使えるのは、硬さのあるロッド入りのエピテーゼです。
ただし、この用途に特化した製品は選び方も使い方も難易度が上がります。
サイズ感、固定の安定性、パートナーとの事前のコミュニケーションが揃って初めてうまく機能します。
初心者がいきなりここから入るのではなく、まずは見た目用パッカーで装着の感覚に慣れてから、段階的に進めるのが現実的です。
グッズ別|選び方と失敗しないポイント
ここからは、主要なパスグッズごとに選び方の核心をお伝えします。
トラシャツの選び方(サイズ・安全性)
トラシャツは「きつければきつほど平らになる」と思いがちですが、小さすぎると肋骨や呼吸に深刻なダメージを与える危険があります。
各ブランドのサイズ表に従い、アンダーバストの実寸をきちんと測って選んでください。
信頼できるブランド(gc2b、Spectrum Outfitters、ナベシャツ専門店など)のトラシャツは、適切な圧迫力に設計されています。
ECサイトの激安品のなかには、圧迫力が強すぎて健康を害するものもあるため、ブランド選びは慎重に行いましょう。
ハーフ丈(胸だけ覆うタイプ)は涼しく動きやすい反面、裾がめくれ上がりやすい欠点があります。
フルレングス(腹部まで覆うタイプ)はめくれにくく安定感がありますが、やや暑くなります。
季節や用途で使い分けるのが理想です。
テーピングの選び方(肌荒れ対策)
胸を固定するテーピングは、必ずトランス用に作られた専用テープ(TransTapeなど)を使ってください。
ガムテープや医療用テープを代用するのは皮膚を傷める原因になるため絶対にやめましょう。
貼り方のコツは、乳首にニップルカバーやガーゼを当ててから、胸を脇方向に引っ張るように貼ること。
剥がすときは専用のオイルリムーバーを使い、温水でふやかしながらゆっくり。
肌が赤くなったら2〜3日休ませてから再開してください。
エピテーゼ(パッカー)の選び方(サイズ・固定方法)
パッカーに関してはエピテーゼ専門記事で詳細に解説していますが、ここでは要点だけまとめます。
初めての方は「見た目用・小さめ・シリコン素材」が鉄則です。
大きすぎると不自然に浮いてしまい逆効果になります。
固定はフィット感のある下着に入れるだけのシンプルな方法から始め、ズレが気になったら専用ポケット付き下着に切り替える、というステップが失敗しにくい順番です。
STPの選び方(漏れ対策・初心者向け)
STPデバイスはカップの形状と体へのフィット感が命です。
体型によって合う合わないがはっきり出るため、可能であれば返品対応のあるショップで購入するか、安価なモデルでまず相性を確かめるのがおすすめです。
初心者はカップが大きめで尿を受けやすいデザインのものが成功率が高いです。
練習はお風呂場の裸の状態から、次に下着あり、最後にズボンありと段階的に。
自宅で5〜10回ほど練習すれば、外出先でも自信を持って使えるようになる方が多いです。
「バレるかも?」の不安を減らすポイント
パスグッズを使ううえで一番気になるのが「周囲にバレないか」ですよね。
バレるリスクを下げるための実践的なコツをまとめます。
サイズが不自然にならない選び方
トラシャツもパッカーも、「やりすぎ」が最大の敵です。
トラシャツで胸を潰しすぎると胸板の中央に不自然な段差ができることがありますし、パッカーが大きすぎるとズボンの股間が明らかに膨れて注目を集めます。
目標は「完璧にフラット」「完璧なバルジ」ではなく、「誰も気にしないレベルの自然さ」です。
男性のシスジェンダーの体は、実は想像よりフラットだったり控えめだったりするもの。
「ちょうどいい加減」を狙いましょう。
ズレ・浮きを防ぐ固定方法
グッズがズレると形が崩れ、不自然な見た目になります。
トラシャツはサイズが合っていれば大きくズレることはありませんが、パッカーは体の動きに合わせてずれやすいため、固定方法が重要です。
もっとも確実なのは専用ポケット付き下着です。
ポケットが股間部分に縫い込まれているため、走っても座っても位置がキープされます。
汗をかく場面ではパウダーを併用すると、シリコンの滑りを防げます。
服の素材・シルエット選び
服選びは最も手軽で効果の高い「パスの裏技」です。
胸が気になる方は、厚手の生地やダークカラー、ストライプ柄のシャツが強い味方になります。
薄い白シャツはトラシャツの輪郭が透けやすいので避けるのが無難です。
ボトムスはストレートシルエットかややゆとりのあるテーパードパンツが、ヒップや太もものラインを自然にカバーしてくれます。
スキニーパンツはお尻の丸みが出やすいため、履く場合はロングシャツやジャケットで腰まわりを隠すと安心です。
汗・ニオイ対策
トラシャツは密着度が高いため汗がこもりやすく、ニオイの原因になります。
通勤・通学中はデオドラントシートを持ち歩き、トイレのたびに脇や胸まわりを拭く習慣をつけると清潔を保てます。
パッカーも汗が原因でにおいやすくなります。
帰宅後は毎日洗浄して乾燥させ、下着もこまめに交換しましょう。
夏場はトラシャツの洗い替えを2〜3枚用意しておくと、衛生面の不安がぐっと減ります。
安全面|使いすぎによる体への負担
トラシャツ長時間使用の注意点
トラシャツの連続着用は1日8〜10時間以内が推奨されています。
それを超えると肋骨の痛み、背中の張り、呼吸のしづらさ、場合によっては肋骨の変形につながるリスクがあります。
帰宅したらすぐに脱ぐ、就寝時は絶対に着けない、運動時は専用のゆるいトラシャツに切り替えるなどのルールを自分の中で決めておくと、安全に長く使い続けられます。
肌トラブル対策
トラシャツの摩擦による擦れ、テーピングによるかぶれ、パッカーの蒸れなど、パスグッズには肌トラブルがつきものです。
異変を感じたら無理せず使用を中断し、肌が回復するのを待ちましょう。
トラシャツの下にコットンのインナーを1枚挟むだけで摩擦を大幅に軽減できます。
テーピングは剥がすときが最も肌に負担がかかるため、専用リムーバーを惜しまず使ってください。
無理しない選択肢
体調が悪い日、肌が荒れている日、猛暑の日は、パスグッズをお休みするのも大切な選択です。
代わりにオーバーサイズのパーカーやゆったりしたジャケットで物理的にカバーするなど、「グッズに頼らない日」のバックアッププランを持っておくと心に余裕が生まれます。
パスグッズは自分を守るための道具であって、自分を追い詰めるものではありません。
体の声を聴きながら、上手に付き合っていきましょう。
予算別|最初に揃えるおすすめセット
低予算(まず1つ)
まず1つだけ買うなら、トラシャツ一択です。
3,000〜6,000円程度で入手できるブランド品を選んでください。
胸がフラットになるだけで、服の選択肢が広がり、外出へのハードルが一気に下がります。
中予算(洗い替え・固定まで)
- トラシャツ2枚(6,000〜12,000円)
- 見た目用パッカー(3,000〜6,000円)
- フィット感のある下着(1,000〜3,000円)
で合計1~2万円程度です。
洗い替えがあると毎日の衛生管理が楽になり、パッカーで下半身のシルエットもカバーできます。
しっかり揃える場合
上記に加えて、
- STPデバイス(5,000〜15,000円)
- 専用ポケット付き下着(3,000〜5,000円)
- テーピング+リムーバー(2,000〜4,000円)
- ケア用品(パウダー・クリーナーなどで1,000〜2,000円)
を揃えると、合計3〜5万円程度。ほとんどの場面に対応できるフルセットになります。
一度に全部揃える必要はなく、使いながら「次に必要なもの」を足していくほうが無駄がありません。
よくある質問(FAQ)
初心者は何から買うべき?
まずはトラシャツです。
胸のフラット化は見た目の変化が大きく、毎日の安心感につながります。サイズ表をしっかり確認して、信頼できるブランドのものを選んでください。
トラシャツに慣れたら、次のステップとしてパッカーやSTPを検討していきましょう。
夏でも使える?
使えますが、工夫は必要です。
メッシュ素材のトラシャツを選ぶ、制汗スプレーやデオドラントシートを携帯する、帰宅後すぐに脱いで肌を休ませるなどの対策を取り入れてください。
パッカーはコーンスターチパウダーで滑り止めをすると、汗によるズレを防げます。
体調不良や肌トラブルを回避するために、できる限り工夫をしましょう。
STPは誰でも使える?
コツをつかめばほとんどの方が使えるようになります。
体型やSTP製品との相性によって難易度は変わります。
お風呂場での練習を5〜10回重ねてから外で使うのが安全です。
どうしても合わない場合は、別の形状のSTPに変えるだけでうまくいくこともあります。
温泉・旅行はどうする?
肌が見える場面では、胸はテーピング(肌色の専用テープ)、下半身は肌色パッカー+医療用接着剤の組み合わせが最も自然です。
ただしお湯で接着が弱まるリスクがあるため、貸切風呂や個室サウナの利用も検討してください。
事前に施設の設備を確認しておくと安心です。
まとめ|「場面→課題→1つ解決」で揃える
FtMのパスグッズ選びで大切なのは、「全部揃えなきゃ」と思わないことです。
自分が一番困っている場面を見つけ、その課題を解決するグッズを1つ選ぶ。
それだけで、日常の景色がずいぶん変わります。
まずはトラシャツから始めて、必要に応じてパッカーやSTPを足していく。
安全面にも気を配りながら、自分のペースで一歩ずつ。
完璧を目指すよりも、「昨日よりちょっと楽になった」を積み重ねていくのが一番です。
この記事が、あなたのパスグッズ選びの出発点になれば幸いです。困ったことがあれば、当事者コミュニティの先輩方のレビューや体験談もぜひ参考にしてみてくださいね。







