「性同一性障害かもしれない……」そう感じたあなたへ。
性別への違和感に気づいたとき、多くの方がまず調べるのが「性同一性障害(性別不合)の診断方法」や「どこで診断が受けられるのか」ということではないでしょうか。
この記事では、DSM-5の診断基準に基づく無料セルフチェックから、実際に診断を受けられる病院の探し方、診断の具体的な流れ、期間、費用、診断書の活用方法まで、順を追ってやさしく解説していきます。
「まだ誰にも相談できていない」「病院に行くのは少し怖い」。そんな方でも安心して読み進められるようにお伝えしていますので、ぜひ参考にしてくださいね。
この記事でわかること
以下の項目を順を追って解説していきます。
- DSM-5準拠の性同一性障害セルフチェック(無料)
- GID・ジェンダークリニックに対応した病院の探し方
- 診断の4ステップと所要期間の目安
- 初診・カウンセリング・診断書の費用(保険適用の有無も解説)
- 診断書を取得後にできること(ホルモン治療・戸籍変更など)について
性同一性障害(性別違和)の無料セルフチェック|DSM-5準拠
「自分の性別に違和感がある」「心と体の性が一致していない気がする」。
そんな気持ちを整理する第一歩として、簡易的なセルフチェックを活用してみましょう。
正式な診断は医療機関でのみ受けられますが、自分の状態を言葉にするための手がかりとして役立てることができます。
性同一性障害・性別不合セルフチェック(DSM-5準拠の簡易版)
以下の項目のうち、6つ以上に6か月以上あてはまる場合、性別違和が疑われます(特に18歳未満向けの基準ですが、成人でも参考になります)。
| # | チェック項目 |
| 1 | 自分が他の性別である、またはそうなりたいと強く感じる |
| 2 | 他の性別の服装やスタイルを強く好む |
| 3 | 他の性別になりきって遊ぶことが多い |
| 4 | 他の性別の遊びや活動を好む傾向が強い |
| 5 | 生まれ持った性に典型的な遊びや行動に強い拒否感がある |
| 6 | 他の性別の体になりたいという強い願望がある |
出典:American Psychiatric Association (2013). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition (DSM-5)
※本チェックリストはあくまで参考用であり、医学的な診断ではありません。
心や体の違和感に強い悩みをお持ちの方は、性同一性障害(性別不合)に対応した医療機関でのカウンセリング・診察をおすすめします。
性同一性障害(性別不合)の診断はどこで受けられる?
性別への違和感を抱えながら生活することは、日々の心身に大きな負担をもたらすこともあります。
そんなとき、正式な診断を受けることが「自分らしく生きる」ための第一歩になるかもしれません。
対応している医療機関の種類
性同一性障害(GID)・性別違和に対応した診断・サポートを行っているのは、主に精神科・心療内科(GID専門医が在籍しているところ)、性同一性障害外来・ジェンダークリニック、性別違和専門の総合病院・大学病院です。
すべての精神科や心療内科がGIDに対応しているわけではないため、専門的な診療経験のある医療機関を選ぶことが大切です。
GIDに対応した病院を探す方法
| 方法 | 具体的な内容 |
| 検索エンジンで探す | 「性同一性障害 診断 +(地域名)」で検索 |
| GID学会の公式リストを使う | GID学会公式サイトに掲載の会員医療機関リストを参照 |
| 支援団体に問い合わせる | LGBTQ+支援団体・当事者コミュニティのおすすめ病院を参照 |
| 体験談を参考にする | 通院経験者のブログ・SNS・YouTube等を参考にする |
多くのクリニックは完全予約制を採用しています。
受診前に「性同一性障害の相談・診断に対応しているか」「診断書の発行まで行っているか」を電話またはウェブサイトで確認しておくのがおすすめです。
診断には精神科医2名の確認が必要
「1回病院に行けば診断が出るの?」と思っている方も多いかもしれません。
日本では性同一性障害(性別不合)の正式な診断には、2名以上の精神科医による診断が必要とされています。
これは、ホルモン治療・性別適合手術・戸籍変更など、人生に大きな影響を与える決断につながるためです。
診断のプロセスは、いきなり難しい質問をされるわけではありません。
多くのクリニックでは、カウンセリングや問診を通じて、少しずつあなたの気持ちや悩みを整理していく形で進められます。安心して臨んでくださいね。
性同一性障害の診断方法・流れを4ステップで解説
医療機関で「性同一性障害(性別不合)」と正式に診断されるには、以下の4つのステップを経ることが一般的です。
STEP 1|ジェンダー・アイデンティティの判定
診断の第一段階では、「自分が感じている性別(ジェンダー・アイデンティティ)」を明らかにするためのカウンセリング・問診が行われます。
医師は、幼い頃から性別に違和感があったか、自分の体に対してどのような感覚を持っているか、日常生活での困りごと、社会的にどのような性として認識されたいかなどを丁寧にヒアリングしていきます。
「自分がどうありたいのか」「どんなことで苦しんでいるのか」――うまく言葉にできなくても大丈夫です。
専門医があなたの思いに寄り添いながら、一緒に整理してくれます。
STEP 2|身体的性別の判定
次に、医学的な性(生物学的性別)の確認が行われます。
外性器・染色体(必要に応じて)、ホルモンの状態、二次性徴(体毛・声・胸のふくらみなど)といった項目をチェックします。
当事者にとって心理的に負担を感じやすいステップかもしれませんが、これは「心の性」と「体の性」のギャップを客観的に把握するために必要な確認です。
体の特徴が診断の「決め手」になるわけではなく、あくまで全体像を把握するための一つの要素です。
STEP 3|除外診断
「除外診断」では、性別違和の原因が他の精神疾患や身体的な要因によるものではないかを確認します。
具体的には、統合失調症・妄想障害などの精神疾患による性別の混乱、発達障害・知的障害に起因する性別表現の誤解、外傷体験・強いストレスによる一時的な性別違和感、文化的・家庭的な影響による混乱などとの鑑別が行われます。
除外診断には時間がかかることもありますが、誤診を防ぐために欠かせない段階です。
焦らず、正確な診断を受けるためのプロセスだと捉えてくださいね。
STEP 4|診断の確定
すべてのステップを経て、最終的に「性同一性障害(性別不合)」であるかどうかの診断が確定されます。
2名以上の精神科医の意見が一致した時点で、正式に診断書が発行されます。
| 活用場面 | 具体的な用途 |
| ホルモン治療・手術 | ホルモン療法や性別適合手術の開始に必要な書類として使用 |
| 戸籍変更 | 家庭裁判所への申請書類として提出 |
| 学校・職場での配慮 | 呼称・制服・トイレ利用などの配慮申請の根拠に |
診断が確定するまでの期間は人それぞれです。
数か月で診断に至る方もいれば、1年以上じっくり向き合う方もいます。
確定診断を受けたからといって、すぐに治療を始めなければならないわけではありません。
大切なのは「今の自分にとって何が必要か」を、ご自身のペースで考え選んでいくことです。
性同一性障害の診断にかかる期間
性同一性障害の診断には、ある程度の時間が必要です。
性別への違和感が一時的なものではないことを慎重に確認するため、継続的なカウンセリングや経過観察が行われます。
| 診断のペース | 目安となる期間 |
| 早い場合 | 3〜6か月程度 |
| 平均的な場合 | 半年〜1年程度 |
| 慎重に進める場合 | 1年以上かかることもある |
1回の受診で診断が終わることはなく、複数回の通院が必要です。
また、2人目の精神科医との連携に時間を要するケースもあります。
性同一性障害の診断にかかる費用
費用の面で不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
診断にかかる費用は、受診する医療機関や診療内容、保険適用の有無によって異なります。
費用の目安一覧
| 診療内容 | 費用の目安 | 保険適用 |
| 初診料 | 3,000〜5,000円程度 | ○(適用の場合) |
| カウンセリング(30〜60分) | 5,000〜10,000円程度 | △(自由診療の場合あり) |
| 診断書発行(1通) | 5,000〜20,000円程度 | ✕(実費) |
| 心理検査・質問票 | 数千円〜 | △ |
| 2人目の精神科医の診察 | 初診と同程度 | △ |
| 証明書発行・郵送手数料 | 数百〜数千円 | ✕(実費) |
カウンセリングが自由診療(保険適用外)として扱われるケースもあるため、事前に料金体系を確認しておくことが大切です。
費用を抑えるための制度・支援
費用が心配な方には、以下のような制度やサポートを活用できる場合があります。
医療費控除(確定申告)では年間10万円以上の医療費が対象になる可能性があります。
一部の自治体ではLGBTQ+関連の医療費補助を設けているところもあります。
また、LGBTQ+支援団体が無料相談や医療機関の紹介を行っている場合もあります。
費用について不安な点は、遠慮せず医療機関に直接聞いてみてください。
ご自身のペースと予算に合わせて進めることが大切です。
性同一性障害の診断書をもらったらできること
診断書を受け取ったあとは、さまざまな選択肢が広がります。
この書類は、あなたの「生きづらさ」や「社会とのズレ」を医療的に証明する大切な根拠となります。
診断書で可能になること
ホルモン治療・性別適合手術の開始:ホルモン療法(エストロゲン投与・テストステロン投与など)や性別適合手術を受ける際の必要書類として使用できます。
戸籍上の性別変更の申請:家庭裁判所に申請する際に診断書の提出が求められます。2023年の最高裁判決により要件の見直しが進められているため、最新情報の確認が必要です。
学校・職場での配慮の申請:呼称、制服、トイレ、更衣室など、日常的な環境を自分らしく整えるための配慮を求める際の医療的根拠として活用できます。
周囲の理解・支援を得やすくなる:「気のせい」や「わがまま」ではなく、医学的に認められた状態であることを周囲に伝えやすくなります。
診断書を持っていても、すぐに行動しなければならないわけではありません。
ホルモン治療も戸籍変更も、あなたのタイミングで決めて大丈夫です。
よくある質問(FAQ)
性同一性障害の診断は、精神科じゃないと受けられない?
基本的には精神科(またはGID専門の心療内科)での受診が必要です。
一般内科や婦人科では診断書の発行まで対応していないケースがほとんどです。
未成年でも診断を受けられる?
受診自体は可能ですが、未成年の場合は保護者の同意が必要な医療機関が多いです。
事前に病院に確認することをおすすめします。
診断書がなくてもホルモン治療は受けられる?
クリニックによっては、診断書なしで自己負担によるホルモン治療に対応している場合もあります。
ただし、医学的リスクや法的な側面を考えると、正式な診断を経ることを強くおすすめします。
性同一性障害(GID)と性別不合・性別違和は何が違う?
「性同一性障害(GID)」はかつての診断名で、現在のDSM-5では「性別違和(Gender Dysphoria)」、ICD-11では「性別不合(Gender Incongruence)」と呼ばれています。
名称は変わりましたが、当事者が感じている違和感の本質は同じです。
日本の法律(特例法)では依然として「性同一性障害」の用語が使われているため、場面によって使い分けが必要です。
まとめ
性同一性障害(性別不合)かもしれない――そう感じたとき、「何から始めたらいいか分からない」という方はとても多いと思います。
この記事では、DSM-5準拠の無料セルフチェックから始まり、GID対応病院の探し方、診断の4ステップ、期間、費用の目安、診断書を取得後にできることまで、順を追って解説してきました。
自分自身のことを理解することは、決して簡単ではありません。
でも、一歩ずつ「自分らしく生きる」ための準備を進めていくことは、確実にあなたの未来を照らす力になります。
診断はゴールではなく、新しいスタートの合図です。
誰かと比べる必要はありません。あなたのペースで、あなたらしい選択を重ねていってくださいね。
本記事は医療的な情報提供を目的としており、特定の医療機関の受診を勧めるものではありません。診断・治療については、必ず専門の医療機関にご相談ください。





