「性同一性障害かもしれない…そう感じたあなたへ」
性別への違和感に気づいたとき、多くの人がまず調べるのが「性同一性障害(性別不合)の診断方法」や「どこで診断が受けられるのか」ということです。
この記事では、性同一性障害(GID)かどうかの無料診断テストを紹介するとともに、実際に診断を受けられる病院の選び方や診断までの流れをわかりやすく解説します。
「まだ誰にも相談できていない」「病院に行くのは少し怖い」
——そんな方でも安心して読み進められるように、分かりやすくご紹介していますので、参考にしてください。
性同一性障害(性別違和)の自己診断テスト
「自分の性別に違和感がある」「心と体の性が一致していない気がする」
そんなとき、まず参考にしたいのが簡易的な自己診断テストです。
もちろん、正式な診断は医療機関での受診が必要ですが、まずは自分の気持ちや傾向を整理するために、簡易テストを活用してみてはいかがでしょうか。
以下のうち、6つ以上に6ヶ月以上あてはまる場合は、性別違和が疑われます(特に18歳未満向けの基準です)。
- 自分が他の性別である、またはそうなりたいと強く感じる
- 他の性別の服装やスタイルを強く好む
- 他の性別になりきって遊ぶことが多い
- 他の性別の遊びや活動を好む傾向が強い
- 生まれ持った性に典型的な遊びや行動に強い拒否感がある
- 他の性別の体になりたいという強い願望がある
※本セルフチェックは参考用です。心や身体の違和感に強い悩みがある方は、性同一性障害(性別不合)専門の医療機関などでの診察・カウンセリングをおすすめします。
性同一性障害(性別不合)の診断はどこで受けられる?

性別に違和感を抱えて生きることは、日々の生活に大きなストレスをもたらすこともあります。そんなとき、正式な診断を受けることが、自分らしく生きる第一歩になるかもしれません。
ここでは、性同一性障害(性別不合)の診断を受けられる医療機関の探し方や、診断に必要な条件について詳しく解説します。
診断を受けることができる病院・クリニックを探す方法
性同一性障害(GID)や性別違和を感じたとき、まず悩むのが「どこに相談すればいいのか」ではないでしょうか。実際、GIDに対応している医療機関は限られており、すべての精神科・心療内科が対応しているわけではありません。
GIDの診断・サポートを行っているのは主に以下のような施設です。
- 精神科・心療内科(GID専門医がいるところ)
- 性同一性障害外来・ジェンダークリニック
- 性別違和に対応した総合病院の専門科
- 「性同一性障害 診断 ○○(地域名)」などで検索する
- GID学会の会員医療機関リスト(GID学会公式サイトに掲載)を参考にする
- LGBTQ+支援団体や当事者コミュニティによるおすすめ病院まとめを見る
- 実際に通院経験がある人のブログやSNS投稿、YouTube体験談を参考にする
また、予約制を取っているクリニックが多いため、事前に電話やWEBサイトで「性同一性障害の相談を受け付けているか」「診断書の発行まで対応しているか」などを確認しておくことが重要です。
診断には精神科医2人の診断が必要!
「診断って、1回病院に行けば終わるの?」と思っている方も多いかもしれません。
実は、日本で性同一性障害(性別不合)の正式な診断には、2人以上の精神科医による診断が必要とされています。性別の変更やホルモン治療・手術など、人生に大きな影響を与える決断につながるからです。
診断といっても、いきなり難しい質問をされるわけではありません。多くのクリニックでは、カウンセリングや問診を通じて、少しずつあなたの気持ちや悩みを整理していく形で進められます。
- まずは1人目の精神科医とのカウンセリング・問診(複数回)
- 必要に応じて、心理テストや生活状況のヒアリング
- 2人目の精神科医との面談または紹介
- 2名の医師の合意に基づいた診断書の発行
診断書はホルモン治療を始めるときや、将来的に戸籍を変更したいときなどに使われます。
一歩をふみ出すのは勇気がいりますが、信頼できる医師と少しずつ話を重ねながら、自分らしさを大切にできる道を一緒に見つけていく——そういったプロセスが診断という時間だといえます。
性同一性障害の診断方法や流れ

性別に対する違和感や悩みを抱えたとき、医療機関で正式に「性同一性障害(性別不合)」と診断されるには、いくつかのステップを踏む必要があります。
ここでは、一般的な診断の流れを4つの段階に分けて、わかりやすくご紹介します。
- ジェンダー・アイデンティティの判定
- 身体的性別の判定
- 除外診断
- 診断の確定
1. ジェンダー・アイデンティティの判定
診断の第一段階では、「自分が感じている性別(ジェンダー・アイデンティティ)」がどのようなものかを明らかにするためのカウンセリングや問診が行われます。
医師は、以下のような質問を通じてあなたの気持ちを丁寧にヒアリングします。
- 幼いころから性別に違和感があったか
- 自分の体に対してどのような感覚を持っているか
- 日常生活での違和感や困りごと
- 社会的にどのような性として認識されたいか
この段階では、「自分がどうありたいのか」や「どんなことで苦しんでいるのか」を言葉にすることが大切です。
無理にうまく話そうとしなくても大丈夫。あなたの思いに寄り添いながら、専門医が一緒に整理してくれます。
2. 身体的性別の判定
次に、身体的な性別の確認が行われます。医学的な性(生物学的性別)を確認するもので、具体的には以下のようなことをチェックします。
- 外性器や染色体(必要に応じて)
- ホルモンの状態
- 二次性徴(体毛、声、胸のふくらみなど)
当事者にとって一番抵抗がある工程かもしれませんが、「心の性」と「体の性」に不一致があるかを客観的に確認するために必要です。
ただし、体の特徴が診断の“決め手”になるわけではありません。この判定はあくまで、あなたの感じている性別とのギャップを把握するための一部だということを頭に入れておいてください。
3. 除外診断
続いて行われるのが、「除外診断」と呼ばれるステップです。性別違和の原因が他の精神疾患や身体的な要因によるものではないかを確認してもらいます。
例えば以下のような状態と区別される必要があります。
- 統合失調症や妄想障害などの精神疾患による性別の混乱
- 発達障害や知的障害に起因する性別表現の誤解
- 外傷体験や強いストレスによる一時的な性別違和感
- 文化的・家庭的な影響による混乱
診断では、これらの可能性を丁寧に見極めながら、あなた自身のジェンダー・アイデンティティが安定したものであるかを慎重に判断していきます。
除外診断は少し時間がかかることもありますが、誤診を防ぐためにも大切な段階です。焦らず、正確な診断を受けるために必要な診断だと捉えるようにしてください。
4. 診断の確定
すべての診断ステップを丁寧に経て、最終的に「性同一性障害(性別不合)」であるかどうかの診断が確定されます。
このときに2人以上の精神科医の意見が一致していれば、正式に「性同一性障害」と診断され、診断書が発行されるのです。
この診断書は、今後の選択肢を広げていくための大切な書類です。たとえば、次のような場面で使用できます。
- ホルモン治療や性別適合手術を受けるときの必要書類として
- 戸籍上の性別を変更したいときに、家庭裁判所へ提出するために
- 就職や学校などで配慮をお願いする際の医療的な根拠として
診断が確定するまでにかかる時間は人それぞれです。数ヶ月で診断に至る方もいれば、じっくり1年以上かけて向き合う方もいます。
また、確定診断を受けたからといって、すぐに治療を始めなければならないわけではありません。
大切なのは「今の自分にとって何が必要か」を自分のペースで考え、選んでいくこと。どんな選択も、あなた自身の気持ちに寄り添ったものであっていいのです。
焦らなくて大丈夫。診断はゴールではなく、これからの人生を自分らしく歩んでいくための「スタート地点」のひとつです。
性同一性障害の診断にかかる期間

性同一性障害(性別不合)の診断には、ある程度の時間が必要です。性別に関する感覚や違和感が一時的なものではないことを慎重に確認し、医師が丁寧に状況を把握する必要があるからです。
- 早い場合:3〜6ヶ月程度
- 平均的には:半年〜1年程度かかることが多い
- 慎重に進める場合:1年以上かけて診断されることもある
診断は、1回の受診で終わるものではなく、継続的なカウンセリングや観察が含まれます。
また、2人の精神科医の診断が必要なため、2人目の医師と連携を取るまでに時間がかかることもあります。
性同一性障害の診断にかかる料金

費用の面で不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
性同一性障害(性別不合)の診断にかかる費用は、受診する医療機関や受ける内容、保険の適用範囲によって異なります。ここでは、一般的な費用感と注意点をご紹介します。
初診・カウンセリング費用
- 初診料:3,000円〜5,000円程度(保険適用時)
- カウンセリング:30分〜1時間あたり5,000円〜10,000円前後(自由診療の場合)
※カウンセリングが保険適用外の自由診療として行われるケースもあるため、事前に料金体系を確認しておくのが安心です。
診断書の発行費用
- 1通あたり:5,000円〜20,000円程度
診断書はホルモン治療や戸籍変更などに必要な書類ですが、保険適用外となることが多いため実費となります。
その他にかかる可能性がある費用
- 心理検査・質問票の費用:数千円〜
- 2人目の精神科医の診断を受ける際の診察料:初診と同程度
- 郵送や証明書発行にかかる手数料
費用がかさんだ場合でも、確定申告での医療費控除や自治体の助成制度が使える場合もあります。
また、一部のLGBTQ+支援団体では、相談や医療機関紹介を無料で行っていることもあるので、活用してみましょう。
なお、お金のことは遠慮せず医療機関に直接聞いてOKです。自分に合ったペースと予算で進めていきましょう。
性同一性障害の診断書をもらったらできること

性同一性障害(性別不合)と診断され、正式な診断書を受け取ったあとは、さまざまな選択肢が広がります。
この診断書は、あなたの「生きづらさ」や「社会とのズレ」を医療的に証明する大切な書類です。
- ホルモン治療や手術の開始に必要な同意資料として使える
- 家庭裁判所での戸籍変更申請の際に提出が必要
- 学校や職場などでの配慮申請(呼称・制服・トイレの利用など)にも活用できる
- 周囲の理解や支援を得やすくなり、社会生活のハードルが下がる
診断書があることで、自分の感じていることが「気のせい」や「わがまま」ではなく、医学的にも認められていることとして周囲に伝えやすくなります。
また、診断書を持っているからといって、すぐに行動しなければならないわけではありません。ホルモン治療も、戸籍変更も、あなたのタイミングで決めて大丈夫です。
一番大切なのは「あなたが心から安心して過ごせる生き方」を選べること。診断書は、そのための後押しになってくれるはずです。
まとめ
性同一性障害(性別不合)かもしれない——そう感じたとき、不安や迷いのなかで「何から始めたらいいのか分からない」という方はとても多いと思います。
この記事では、簡易的な自己診断テストから実際に診断を受けられる病院の探し方、診断の流れや必要な費用、診断書でできることまで、順を追って解説してきました。
- 性別に違和感を抱いたときは、まずセルフチェックで気持ちを整理する
- 正式な診断は、GIDに対応した精神科やジェンダークリニックで受けられる
- 診断には2名以上の精神科医による評価と時間をかけたカウンセリングが必要
- 診断書があれば、ホルモン治療・戸籍変更・学校や職場での配慮などが受けやすくなる
自分自身のことを理解することは、決して簡単なことではありません。でも、一歩ずつ「自分らしく生きる」ための準備をしていくことは、確実にあなたの未来を明るくする力になります。
診断はゴールではなく、新しいスタートの合図。
誰かと比べる必要はありません。あなたのペースで、あなたらしい選択を重ねていってくださいね。
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