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FtMが子どもを授かるための妊活方法は?パパになったFtMの体験談

戸籍変更が済み、法律上「結婚できる」状態になったとき、次に考えるのは——「子どもを持つこと」ではないでしょうか。

FtM当事者やそのパートナーにとって、妊活に踏み出すのは勇気のいること。「どんな方法があるの?」「自分たちにも可能なの?」と、不安や迷いを抱える方も少なくないと思います。

この記事では、FtM当事者である筆者が実際に子どもを授かることができた経験をもとに、「セルフシリンジ法」という妊活方法を詳しくご紹介します。

妊活にはどんな選択肢があるのか、セルフシリンジ法のやり方、必要な道具、注意点など、これから妊活を始めたいと考えている方に向けて、できるだけわかりやすく、実体験ベースで解説しています。

目次

FtMの妊活方法

「子どもを持ちたい」と考えたとき、FtMカップルにはどのような妊活方法があるのでしょうか。情報が少なく、どう始めればいいか分からず不安になる方も多いと思います。

多くの方に選ばれているのが、次の2つの方法です。

  • セルフシリンジ法
  • 医療機関での人工授精(AID)

それぞれにメリット・注意点があり、自分たちの状況や考えに合った方法を選ぶことが大切です。

以下では、これらの方法をひとつずつ詳しく解説していきます。

セルフシリンジ法

セルフシリンジ法とは、シリンジ(針のない注射器)を使って、精子をパートナーの膣内に注入する方法です。

医療機関を介さず自宅でできることから、FtMカップルの間で選ばれることの多い妊活方法のひとつです。

プライバシーを守りながら妊活が進められるため、精神的なハードルが比較的低く「自分たちのペースで取り組みたい」という方に向いている方法だといえます。

ただし、使用する道具の衛生管理や、排卵日のタイミングを合わせる工夫等が必要ですし、精子提供者との信頼関係も重要になります。

実際にこの方法で子供を授かったカップルも多く、この記事の筆者もその一人です。
詳しい方法や注意点については、このあとでご紹介していきます。

医療機関での人工授精(AID)

AID(非配偶者間人工授精)は、医療機関で提供精子を用いて妊娠を目指す方法です。精子バンクを通じた匿名提供であることが多く、衛生面や安全性の確保がされている点が特徴です。

医師のサポートを受けながら妊活を進められるため、セルフシリンジ法に不安がある方や、より医学的に管理された環境で妊活を進めたい方に向いています。

一方で、対応している病院が限られていたり、費用が比較的高額になったりする場合もあるため、事前のリサーチや準備が必要です。

なかには、パートナーがFtMである場合には受け付けていない医療機関をあるため、注意しましょう。

セルフシリンジ法を行うまでの流れ

シリンジ法は比較的手軽にできる妊活方法ですが、事前の話し合いや準備がとても大切です。以下のステップに沿って、無理なく進めていきましょう。

STEP
パートナーとしっかり話し合う

まずは、パートナーとの気持ちのすり合わせが何より大切です。

妊活に対する思いや、シリンジ法に対する考え方について、率直に話し合っておきましょう。

特に話し合っておきたいポイント
  • セルフシリンジ法という方法で進めることに同意しているか
  • 精子提供者を誰にするか(知人・親族・第三者)
  • どのくらいの期間を目安に取り組むか
  • 将来、子どもに精子提供の経緯を伝えるかどうか

お互いが納得したうえで進めることで、妊活がより前向きなものになります。

STEP
精子提供者に協力を依頼する

提供者が決まったら、協力してもらえるかを正式に確認しましょう。

信頼できる人であることはもちろん、提供することについてしっかり理解し、同意してもらうことが大切です。

第三者(特に親族でない知人など)に依頼する場合は、後々のトラブル防止のためにも、同意書やLINEでの記録などを残しておくのがおすすめです。

筆者の場合は、実の弟に協力をお願いしました。「子どもを授かりたいこと」「シリンジ法という方法があること」などを説明した上で、きちんと了承を得てから進めました。

STEP
排卵日を確認してスケジュールを調整

排卵のタイミングに合わせて実施することが成功のカギとなります。ルナルナなどの排卵予測アプリを活用して、排卵日をあらかじめ把握しておきましょう。

妊娠しやすいとされるのは、排卵予定日の3日前から翌日までの約5日間(参考:ロート製薬)。

この期間の中で、自分・パートナー・提供者のスケジュールを合わせ、実施日を決めていきます。

私たちの場合は、排卵予定日の2日前から排卵日にかけて、連続で3日間シリンジ法を実施しました。
連日にできたことが、妊娠につながったと感じています。

セルフシリンジ法のやり方

準備が整ったら、いよいよシリンジ法の実施です。手順自体はシンプルなので、落ち着いて進めれば問題ありません。

以下は、基本的な流れです。

セルフシリンジ法の基本ステップ(所要時間:30分〜1時間)
  1. 精子提供者に精子を採取してもらう
     提供は直前に行うのが理想です(採取後1時間以内が目安)。
  2. カテーテルとシリンジを準備する
     清潔な状態にしておくことが大切です。
  3. 採取から10〜15分後、精子を吸引する
     精子は液状になるまで少し時間を置き、シリンジで吸い取ります。
  4. パートナーの膣内にゆっくり注入する
     カテーテルを挿入し、奥まで届くよう優しく注入します。
  5. 10分〜30分程度、横になってリラックスする
     注入後は仰向けで安静に。枕などで腰を少し高くするのもおすすめです。

実施の場所については、自宅・ホテル・提供者宅などさまざまですが、リラックスできる場所を選ぶことがポイントです。可能であれば、落ち着いた雰囲気の自宅が安心かもしれません。

精神的な安心感があると、妊活そのものも「特別な負担」になりにくくなります。

セルフシリンジ法に必要なもの

セルフシリンジ法は、専用のシリンジキットがあれば自宅で手軽に実施できる妊活方法です。

ただし、成功率を高めるためには、排卵日を正確に把握し、体調管理を整えておくことがとても大切です。

ここでは、実際に筆者と妻がセルフシリンジ法を行った際に使用したアイテムをご紹介します。

使用していたアイテム一覧
  • シリンジキット(必須)
  • 基礎体温計(排卵日予測に役立つ)
  • ルナルナアプリ(体温・生理日管理アプリ)
  • 妊娠検査薬(妊娠判定用)

それぞれどんな商品を選べばいいか迷う方も多いと思います。ここでは、実際に使ってよかったと感じたものを、使用感とともにご紹介します。

※妊娠のしやすさには個人差があります。筆者の妻は1周期目で成功しましたが、体質や年齢によって異なる場合があります。

シリンジキット

セルフシリンジ法に欠かせないのが、カテーテルとシリンジ、採精カップがセットになった「シリンジキット」です。

Amazonや楽天などで購入でき、10〜20回分が1セットになっています。

  • 価格相場:8,000円〜10,000円程度(1回あたり約400円〜1,000円)
  • AID(人工授精)が1回2〜3万円かかることを考えると、圧倒的にコストが安いのが魅力

私たちはAmazonで高評価だった「オンリースタイルの家庭用シリンジ法キット」を使いました。初心者にも使いやすく、価格も手ごろで満足しています。

基礎体温計

妊活の基本といえるのが、基礎体温の測定と記録です。基礎体温は排卵日を予測する上で非常に重要な指標で、妊娠しやすい時期を逃さないために欠かせません。

  • 基礎体温計は通常の体温計よりも微細な変化を測定できる
  • 価格相場:2,000円〜4,000円程度
  • 妊活を始める最低3ヶ月前から測り始めるのが理想

筆者の妻は「オムロンの婦人体温計」を使っていました。専用のアプリがあるので、面倒くさがりでも続けられたそうです。

ルナルナアプリ

ルナルナは生理・排卵日・体温などを一括管理できる人気アプリです。毎日の記録を続けることで、排卵のタイミングや妊娠しやすい時期を予測してくれるので、妊活のスケジュールが立てやすくなります。

  • 生理予定日や排卵期の目安がわかる
  • 妊娠しやすい日がカレンダーで一目で見える
  • パートナーと情報を共有することもできる

筆者の場合は妻と2人でルナルナを活用して、排卵日を確認しながらシリンジ法の実施日を決めていました。

私たちは1周期目で妊娠できたので、予測の正確さに驚きました。

妊娠検査薬

妊娠検査薬はシリンジ法自体には必要ありませんが、妊活の結果を確認するために用意しておくと安心です。

  • 使用タイミング:シリンジ法を実施してから、生理予定日を1週間過ぎたあたり
  • 市販薬でOK(薬局・Amazonなどで簡単に購入可能)

私たちの場合は妻が予定日を1週間過ぎても生理がこなかったので「チェックワン」を使用。尿をかけて数秒で線が出て、すぐに結果が分かったそうです。

FtMがシリンジ法で子どもを授かった体験談【妻の妊娠まで】

ここからは、FtM当事者である筆者が、セルフシリンジ法でパートナーの妊娠に至るまでの実体験をご紹介します。

私たちの場合、初めての妊活であるにも関わらず1周期目で無事に妊娠が確認できました。現在は授かった子供もすくすく育ち、今年で3歳になります。

妊活を始めてから妊娠発覚までの流れを、リアルな体験としてお話していきますね。

1. 妻がルナルナアプリで基礎体温を計測

妊活を意識し始めた半年ほど前から、妻が基礎体温の記録を毎日つけてくれるようになりました

使っていたのはルナルナアプリと基礎体温計。アプリ上にグラフが出るので、低温期・高温期の切り替わりが分かりやすく、排卵日の予測にも役立ちました。

記録する期間が長くなるほど、ルナルナの排卵予測も正確になっていく感覚がありました。

2. 弟と話し合って了承を得る

精子提供については、以前から「いずれ協力をお願いするかも」と話していた実の弟に頼むことに決めていました

排卵予定日が近づいてきたタイミングで、弟に連絡。会って30分ほど話し「シリンジ法を使って妊活をしたい」「精子提供をお願いしたい」と伝えました。

弟は話をすんなり受け入れてくれて、「協力できることがあってよかった」と言ってくれたのがとても嬉しかったです。

3. シリンジキットを購入

準備が整ったタイミングで、Amazonでシリンジ法キットを購入しました。箱を開けたときの「いよいよだ…!」という緊張感は今でも覚えています。

なかには以下のものが入っていました。

  • 使用方法の説明書
  • カテーテル
  • シリンジ
  • 医療用の用紙(成分や使用上の注意など)

医療器具っぽさに少しビビりつつも、使い方はシンプルだったので安心しました。

4. 排卵日の3日前から連続で実施

妻の排卵予定日が確定したので、排卵日の2日前から連続3日間、毎晩シリンジ法を実施することに。私・妻・弟のスケジュールが合うように調整しました。

当日は弟に自宅まで来てもらい、採精してもらいました。なるべく精子が空気に触れないよう、サランラップをかけてもらうなど工夫しながら対応しました。

弟が採精中は私と妻で家を出て買い物へ。連絡が来たら戻り、感謝を伝えて見送った後、妻に精子を注入しました。

  • 腰の下にクッションを入れて、精子が逆流しないよう角度を調整
  • 奥まで入れすぎず、やや勢いよく注入
  • 終了後はそのままベッドで熟睡してもらうことで体を休める

本来は30分ほど横になればOKなのですが、妻はそのまま朝までぐっすり。これが結果的に良かったのかも…?

5. 生理予定日から3週間後に妊娠発覚

シリンジ法を実施してから約3週間後。妻に生理がこないこと、基礎体温がずっと高いままだったことから、「もしかして…?」となり、妊娠検査薬を購入しました。

結果は見事に陽性反応!2人で思わず声をあげてしまうほど、驚きと嬉しさが混ざった瞬間でした。

すぐに産婦人科を受診し、妊娠が正式に確定。エコーで小さな命を見たときは、なんとも言えない感動がありました。

このように、セルフシリンジ法を選んだことで、自分たちの気持ちを大切にしながら妊活を進めることができました。

FtMの妊活方法まとめ

FtMとして「子どもを育てたい」と思ったとき、どうすれば実現できるのか、誰に相談すればいいのか分からず、ひとりで悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。

この記事では、筆者自身の体験をもとに、FtMの妊活方法やセルフシリンジ法の具体的な流れ・準備・必要な道具、そして妊娠に至るまでのエピソードを紹介してきました。

この記事のおさらい
  • 妊活方法には、セルフシリンジ法・タイミング法・人工授精(AID)などがある
  • セルフシリンジ法は、自宅で実施できる手軽さとプライバシーの守りやすさが特徴
  • 精子提供者の選定や排卵日の特定など、丁寧な準備と話し合いが妊活成功のカギ

妊活には不安や迷いがつきものですが「どうありたいか」「どんな家族を築きたいか」という気持ちを大切にしながら、一歩ずつ準備を重ねていくことが、良い未来へつながります。

妊娠・出産はゴールではなく、新しい家族のはじまり。あなたのペースで、あなたらしい形の「家族づくり」を見つけていってくださいね。

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