女性ホルモン注射とは【まず結論】
一言でいうとどんな治療?(女性化ホルモン=エストロゲン)
女性ホルモン注射とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を体の外から注射で補い、体を女性的な方向へ変化させていく治療です。
代表的な変化として次のようなものが徐々に現れてきます。
- 肌がやわらかくなる
- 胸がふくらむ
- 体脂肪が女性的な位置につく
日本で注射として使われることが多いのは、吉草酸エストラジオールやエストラジオールシピオネートなどの製剤です。
1〜2週間に1回のペースで筋肉注射を行うのが標準的なスケジュールになります。
この記事の対象(MtF/トランス女性・女性化を目指す人)
この記事では、MtF(トランス女性)やトランスフェミニンの方が女性化のためのホルモン療法を調べている・これから始めようとしている場面を想定して書いています。
更年期障害の治療でもエストロゲン製剤は使われますが、投与の目的や量、管理の仕方が異なります。
本記事ではトランスジェンダーの方の女性化ホルモン療法にフォーカスしてお伝えしていきますね。
注射は選択肢の1つ(飲み薬・貼り薬・ジェルもある)
エストロゲンの投与方法は注射だけではありません。
飲み薬(経口剤)、肌に貼るパッチ(貼り薬)、ジェルタイプなど複数の選択肢があります。
注射は血中濃度を安定させやすいというメリットがある一方、通院が必要になるというデメリットもあります。
どの方法がご自身に合っているかは、生活スタイルや持病の有無も踏まえて主治医と一緒に選んでいきましょう。
投与方法の比較は後のセクションでもう少しくわしくお伝えします。
多くは「女性ホルモン+テストステロンを下げる薬」の組み合わせ
MtFの方のホルモン療法では、エストロゲンの投与に加えて、テストステロン(男性ホルモン)の作用を抑える「抗アンドロゲン薬」を併用するのが一般的です。
代表的な薬にはスピロノラクトンや酢酸シプロテロンなどがあります。
エストロゲンだけでは男性ホルモンの影響を十分に抑えきれないことが多いため、この二本柱の組み合わせで治療を進めるケースがほとんどです。
「女性ホルモン注射」と検索して来られた方も、実際の治療ではセットで処方されることが多い点を覚えておいてください。
先に知っておくこと|できること・できないこと
女性ホルモンを始めると体にさまざまな変化が起きますが、「変わること」と「変わりにくいこと」があります。
ここを先に知っておくと、期待と現実のギャップで落ち込むことを防げます。
声は基本変わらない(声は別の方法で整える)
これは最も重要なポイントです。
エストロゲンを投与しても、声の高さはほとんど変わりません。
テストステロンによって一度太く長くなった声帯は、女性ホルモンでは元に戻らないためです。
女性的な声を手に入れるには、ボイストレーニングや声の女性化手術といった別のアプローチが必要になります。
「ホルモンを始めれば声も高くなる」と期待されている方は、この点をあらかじめ理解しておいてくださいね。
体毛は減るが、ヒゲは残りやすい(脱毛が別で必要なことも)
腕や脚の体毛はホルモン療法で薄く・細くなっていきますが、顔のヒゲに関してはホルモンだけでは十分に減らないことが多いです。
ヒゲの毛根は男性ホルモンの影響を強く受けて発達しているため、エストロゲンだけでリセットするのは難しいのが実情です。
そのため、多くのMtFの方は医療レーザー脱毛や針脱毛(ニードル脱毛)を並行して進めています。
ホルモン療法と脱毛はセットで考えておくと、心の準備も予算の計画も立てやすくなりますよ。
胸は成長するが、限界と個人差がある
胸の発達は多くの方が楽しみにしている変化ですが、成長の程度には大きな個人差があります。
遺伝的要因(お母さんや姉妹の胸のサイズ)に左右される部分が大きく、一般的にはシスジェンダー女性の平均よりやや小さめに落ち着くことが多いです。
発達が本格化するまでに1〜3年かかることも珍しくありません。
「始めて数か月で大きくならない」と焦る方もいらっしゃいますが、胸の成長はとてもゆっくりです。長い目で見ていきましょう。
変化はゆっくり進む(短期間で別人にはならない)
ホルモン療法の変化は数日で劇的に現れるものではなく、月単位・年単位でじわじわと進んでいきます。
「第二の思春期」にたとえられることもあるように、体が少しずつ変わっていくプロセスです。
1か月や2か月で目に見える変化が感じられないこともあります。でも、体の中では確実に変化が起き始めています。
周囲と比べず、ご自身のペースで変化を見守ってあげてくださいね。
注射を選ぶ理由・選ばない理由(注射検索の核心)
「注射と飲み薬、どっちがいいの?」という疑問は、多くの方が抱えるテーマです。
それぞれの特徴を整理して、選ぶ際のヒントにしてください。
注射のメリット(ざっくり)
注射の大きなメリットは、肝臓を経由せずに直接血液にエストロゲンが入るため、肝臓への負担が少ない点です。
また、飲み忘れのリスクがなく、安定した血中濃度を保ちやすいのも利点です。
経口剤と比べて血栓リスクがやや低いとする研究データもあり、血栓リスクが気になる方にとっては安心材料になります。
注射のデメリット(通院・副作用管理など)
一番のデメリットは、注射のたびに通院が必要なことです。
1〜2週間に1回のペースで病院に通うのは、お仕事や学校との調整が必要になります。
注射の痛みが苦手な方にとっては心理的なハードルにもなりますよね。
また、注射直後にホルモン値がピークを迎え、次の注射前に谷間ができるため、気分や体調に波が出やすいという声もあります。
この波が気になる場合は、投与間隔の調整や貼り薬への切り替えが検討されることもあります。
飲み薬/貼り薬/ジェルとの違い(ざっくり比較)
飲み薬:手軽で自宅で完結しますが、肝臓で代謝されるため肝機能への負担がやや大きく、血栓リスクも注射やパッチより高めとされています。
貼り薬(パッチ):血中濃度の変動が少なく安定しやすいのが特長ですが、かぶれやすい方には向きません。
ジェル:塗る手間がありますが、吸収量を微調整しやすいというメリットがあります。
どの方法にも一長一短がありますので、「これが正解」というものはありません。
持病の有無、通院のしやすさ、ライフスタイル、コストなどを総合的に主治医と話し合いながら決めていくのがベストです。
女性ホルモンで起こる体の変化(全体像)
エストロゲンと抗アンドロゲン薬の投与を続けると、体にどんな変化が起きるのでしょうか。
ここでは主な変化を部位・領域ごとに見ていきます。
肌・皮脂・体臭の変化
・肌質の変化
多くの方が最初に気づく変化の一つです。
・皮脂の分泌が減り、肌のきめが細かくなって、しっとりした感触に変わる
「化粧ノリが格段に良くなった」という声はとても多いです。
・体臭がやわらかくなる傾向がある
汗のにおいが変わったと感じる方もいます。
スキンケアが楽しくなる時期でもありますので、自分に合った保湿アイテムを見つけてみてくださいね。
体脂肪の付き方・体型の変化
エストロゲンの作用により、ヒップや太ももに脂肪がつきやすくなります。
ウエストとヒップの差が生まれ、全体的に丸みのある女性的なシルエットに近づいていきます。
ただし、骨格そのものを変えることはできません。
肩幅や手足の大きさはホルモンでは変わりませんので、ファッションやスタイリングでカバーする工夫を併用するとバランスが整いやすくなります。
筋肉量の変化
テストステロンが抑えられると筋肉の維持が難しくなり、上半身を中心に筋肉量が徐々に落ちていきます。
握力や腕の力が弱くなったと感じる方が多いです。
筋肉量の減少は体型を女性的に見せるプラスの面もありますが、日常生活で重いものを持つ場面などではギャップを感じることがあるかもしれません。
急激に筋力を落とさないためにも、軽い運動は続けておくのがおすすめです。
胸の成長
乳腺組織が発達し始め、胸が少しずつふくらんでいきます。
投与開始から3〜6か月で乳首の周辺に軽い痛みや硬さを感じるのが成長のサインです。
ちょうどシスジェンダー女性の思春期と似たプロセスです。
最終的なサイズに達するまでには2〜5年かかることもあります。
成長のピークは投与開始から1〜3年目あたりとされていますが、それを過ぎてもわずかに成長が続く方もいます。
焦らず、体の変化を楽しんでいただければと思います。
性欲・気分の変化
テストステロンが抑制されると、性欲が落ち着くと感じる方が多いです。
これを心地よいと感じる方もいれば、パートナーとの関係に影響すると感じる方もいます。
性欲の変化は個人差が大きいので、気になることがあれば率直に主治医に伝えてください。
気分面では、感受性が豊かになった、涙もろくなった、情緒が安定したなど、さまざまな体験が報告されています。
ホルモンバランスが安定するまでの最初の数か月は気分の波が大きくなることもありますが、次第に落ち着いていくケースが多いです。
生殖・性機能への影響(初心者が一番不安な所)
ホルモン治療を始めるにあたって、生殖や性機能への影響は多くの方が気がかりなテーマです。
ここではオープンにお伝えしますね。
精子・妊よう性への影響(将来子どもを望む場合の考え方)
エストロゲンと抗アンドロゲン薬を継続すると、精巣の機能が低下し、精子の数と運動性が著しく落ちていきます。
投与期間が長くなるほど回復が難しくなる傾向があり、長期的には不可逆になる可能性もあります。
将来お子さんを望む可能性が少しでもある方は、ホルモン治療を始める前に精子の凍結保存を検討してください。
凍結しておけば、後日パートナーとの間で生殖補助医療を利用できる道が残ります。
治療を開始してからでは手遅れになることもありますので、早い段階で主治医と話し合っておくことが大切です。
勃起・射精の変化(起こりうること)
テストステロンが抑えられることで、自然な勃起の頻度は減少し、勃起そのものが難しくなっていきます。
射精量が減る、射精時の感覚が変わるといった変化も報告されています。
こうした変化を歓迎する方もいれば、戸惑いを感じる方もいます。
どちらも自然な反応ですので、ご自身の感じ方を否定する必要はありません。
パートナーがいる場合は、変化についてオープンに話し合っておくと関係を維持しやすくなります。
治療前に考えておきたい選択(保存など)
繰り返しになりますが、精子の凍結保存はホルモン治療を始める「前」に行うのが理想です。
費用は初回の凍結処理で3〜5万円程度、年間の保管料で1〜3万円程度が一般的な目安です。
「今は子どもなんて考えられない」と思っていても、5年後、10年後に気持ちが変わる可能性は誰にでもあります。
選択肢を残しておくかどうか、治療開始前にじっくり考えておく価値のあるテーマです。
いつから変化が出る?(タイムラインの目安)
「いつから胸が育つの?」「肌の変化はどのくらいで分かる?」。
変化が見えてくるまでの目安を時系列で整理します。
数週間〜数か月で起こる変化
・肌質の変化
投与開始から2~4週間ほどで肌がやわらかくしっとりしてくる方が多いです。
・性欲の低下
この時期に始まりやすい変化です。
体臭の変化、感情面のシフト(涙もろくなるなど)を感じ始める方もいます。
一方で、見た目に大きな変化が現れるのはまだ先ですので、この段階で焦る必要はありません。
半年〜1年で起こる変化
・胸の発達
目に見えて分かるようになります。
・体脂肪の再分布
・顔つきが丸みを帯びてくる
「少し雰囲気が変わったね」と周囲に言われることもあるかもしれません。
体毛の減少も徐々に進みますが、ヒゲに関してはこの時期でもまだ大きな変化は期待しにくいです。
脱毛を並行して始めている方は、この頃から成果を実感し始めることが多いです。
数年かけて進む変化(胸・体型など)
胸の成長が完了に近づくのは投与開始から2〜5年後が目安です。
体脂肪の分布もこの期間でほぼ安定し、鏡に映る自分のシルエットに「だいぶ変わったな」と感じられるようになる方が多いです。
ホルモン療法は短距離走ではなくマラソンです。
1年目の自分と3年目の自分を写真で比べてみると、驚くほどの変化に気づくはずです。
記録を残しておくのもおすすめですよ。
副作用とリスク|必ず知っておきたいこと
女性ホルモン療法にはうれしい変化がたくさんありますが、副作用やリスクも存在します。
安全に治療を続けるために、ここはしっかり押さえておきましょう。
血栓(血のかたまり)リスクと注意が必要な人(喫煙など)
エストロゲン投与で最も警戒すべきリスクが血栓症です。
深部静脈血栓症(脚の血管に血のかたまりができる)や肺塞栓症(それが肺に飛ぶ)は、命に関わることもある合併症です。
リスクを高める要因としては、喫煙、肥満、長時間の同じ姿勢(長距離フライトなど)、35歳以上、血栓の家族歴などが挙げられます。
特に喫煙との組み合わせはリスクを大幅に上げますので、ホルモン療法を始めるなら禁煙は大前提と考えてください。
脚の片側だけが腫れる、息苦しい、胸が痛いなどの症状が出たらすぐに医療機関を受診してください。
体重・むくみ
エストロゲンには水分を体にため込みやすくする作用があるため、むくみや体重増加を感じる方がいます。
とくに投与初期に目立ちやすいですが、体が慣れてくると落ち着いてくることが多いです。
急激な体重増加やむくみが続く場合は、肝機能や甲状腺機能に問題が出ていないか確認する必要があります。
我慢せず主治医に報告してくださいね。
メンタル・気分の変化
ホルモンバランスの変動に伴い、気分の浮き沈みが大きくなったり、不安感が増したりすることがあります。
多くの場合はホルモン値が安定するにつれて改善していきます。
落ち込みが長く続いたり日常生活に支障が出たりする場合はカウンセラーや精神科の力を借りることも選択肢に入れてください。
定期検査で見ること(ざっくり)
安全に治療を続けるために、3〜6か月ごとの血液検査が欠かせません。
チェックする主な項目は、
- エストラジオール値(女性ホルモンの血中濃度)
- テストステロン値
- 肝機能(AST・ALT)
- 腎機能
- プロラクチン値
- 脂質プロファイル
などが挙げられます。
数値に異常があれば投与量の調整や薬の変更で対応します。
「体調は良いから検査はいいかな」と思うこともあるかもしれませんが、自覚症状のないリスクを早期にキャッチするのが定期検査の役割です。
面倒でも、ぜひ欠かさず受けてくださいね。
どれくらい続ける?やめるとどうなる?
続け方の考え方(人で違う)
多くのMtFの方は、得られた女性的な変化を維持するためにホルモン療法を長期にわたって続けます。
特に精巣を摘出した方は体内でエストロゲンもテストステロンもほとんど作られなくなるため、ホルモン補充を続けることが健康維持の観点からも重要になります。
一方で、手術を受けていない方や、ある時点で望む変化が十分得られたと感じた方は、主治医と相談しながら減量や一時中断を検討することもあります。
治療のゴールは人それぞれですので、ご自身の体と心の声に正直に向き合ってください。
やめると戻る変化/戻りにくい変化
投与を中止した場合に元に戻りやすいのは、
- 肌質のやわらかさ
- 体脂肪の女性的な分布
- 筋肉量の減少状態
- 体毛の増加(精巣が残っている場合)
- 肌の脂っぽさ(精巣が残っている場合)
精巣が残っている場合はテストステロンの分泌が再び優勢になります。
一方、胸の発達(乳腺組織の成長)は不可逆的な変化に近く、投与をやめてもほとんど元には戻りません。
中止を検討する際は、どの変化が残りどの変化が戻るのかを主治医と一つずつ確認しておくと安心です。
続ける人が多い理由(目的の維持)
実際にホルモン療法を続けている方の多くは、「やめると元に戻ってしまう変化があるから」という理由に加えて、「ホルモンを続けていること自体が精神的な安定につながっている」と語ります。
女性ホルモンが体内にある状態が日常になっていると、それ自体が安心感のベースラインになるのかもしれません。
続ける・やめるの二択ではなく、量やペースを調整しながら付き合い続けるという選択もあることを覚えておいてくださいね。
費用の目安|何にお金がかかる?
ホルモン療法は長期間にわたる治療です。
月々の負担に加えて、脱毛などの周辺コストも含めた全体像を把握しておきましょう。
診察・検査費
ジェンダー外来の初診料は保険適用で1,500〜3,000円前後、自費のクリニックでは8,000〜15,000円ほどです。
投与中に必要な定期血液検査は1回2,000〜5,000円程度が目安になります(保険適用の場合)。
薬代(注射/飲み薬/貼り薬)
・注射の場合は保険適用で1回500〜2,000円程度、自費で3,000〜6,000円程度です。
1〜2週間に1回の頻度なので、注射の薬代だけなら月額2,000〜6,000円ほどになります。
・飲み薬(プレマリン、プロギノバなど)は月額1,000〜5,000円程度です。
・貼り薬(エストラーナテープなど)は月額2,000〜5,000円程度です。
・抗アンドロゲン薬の費用(月額1,000〜5,000円程度)も別途加わります。
年間費用の目安
保険が使える医療機関で注射を続けた場合、年間の総コスト(診察+検査+薬)はおおむね5〜12万円の範囲です。
すべて自費になると年間15〜30万円に膨らむこともありますので、保険適用の可否は事前にしっかり確認しておきましょう。
追加でかかりやすい費用(脱毛など)
ホルモン療法だけではヒゲが十分に減らないため、医療脱毛の費用が別途発生するケースがほとんどです。
ヒゲの脱毛完了まで10〜25万円、全身脱毛を加えると30〜60万円以上になることもあります。
そのほか、ボイストレーニング(月額5,000〜20,000円程度)、美容医療、ウィッグなどの費用が加わることもあります。
ホルモン療法の費用だけでなく、トータルの女性化コストとして見積もっておくと計画が立てやすいです。
始めるまでの一般的な流れ
「治療に興味はあるけれど、最初の一歩がわからない」。
ここでは、初回の相談から投与開始までの道のりをステップバイステップでご案内します。
相談先の探し方
女性ホルモン注射を処方できるのは、ジェンダー外来やGID専門クリニック、ホルモン療法に対応した内分泌科などです。
お住まいの近くに専門外来がない場合は、LGBTQ+支援団体の紹介リストや当事者コミュニティの口コミが頼りになります。
最近はオンラインで初回面談を行っているクリニックも出てきていますので、通える範囲に専門施設がない方も諦めずに探してみてください。
初回相談で聞かれやすいこと
初めての受診では、
- 性別に関する違和感をいつ頃から感じているか
- 現在の生活状況
- 持病や服用中の薬
- ホルモン治療に対してどんな期待を持っているか
といった内容が聞かれることが多いです。
きれいにまとまっていなくても大丈夫です。箇条書きのメモを持参すれば、伝え漏れを防ぎやすくなります。
「まだ迷っているけど話だけ聞きたい」という段階でもまったく問題ありませんよ。
検査・説明・同意
投与の前に、血液検査(ホルモン値・肝機能・腎機能・血算・脂質・プロラクチンなど)が行われます。
結果を踏まえて、主治医からエストロゲンの効果、副作用、不可逆的な変化、生殖への影響について説明があり、同意書にサインする流れになります。
この「インフォームドコンセント」のプロセスは、ご自身を守るための大切なステップです。
疑問点はどんな小さなことでも質問してOKですので、納得した上で治療をスタートしてくださいね。
開始後の通院・定期チェック
投与が始まったら、最初の1年は3か月ごと、安定してきたら半年ごとに血液検査と診察を受けるのが標準的なスケジュールです。
エストラジオール値やテストステロン値を確認して投与量を微調整し、副作用が出ていないかもチェックします。
通院のペースはお仕事や学校との兼ね合いで負担に感じることもあるかもしれませんが、安全に治療を続けるための命綱です。
面倒な日もあるかもしれませんが、ぜひ定期チェックのスケジュールは守ってくださいね。
よくある質問(FAQ)
声は変わる?
残念ながら、女性ホルモンの投与だけでは声はほぼ変わりません。
一度低くなった声帯はエストロゲンでは元に戻せないためです。女性的な声を目指す場合は、ボイストレーニングや声の女性化手術が選択肢になります。
ボイストレーニングは半年〜1年の継続で大きな変化を実感される方が多いですよ。
体毛(ヒゲ)はなくなる?
腕や脚の体毛は薄く細くなりますが、ヒゲはホルモンだけではほとんど減りません。
ヒゲを根本的に減らすには、医療レーザー脱毛や針脱毛(ニードル脱毛)が必要です。
多くのMtFの方はホルモン療法と脱毛を同時に進めています。
完了まで1〜2年以上かかることが多いですが、着実に減っていきますので、根気よく続けてみてください。
胸はどれくらい大きくなる?
個人差がとても大きいのが正直なところです。
遺伝的要因に左右される部分が大きく、お母さんや姉妹の胸のサイズが一つの参考になります。
一般的にはAカップ〜Bカップ程度に落ち着くことが多いですが、それ以上に発達する方もいます。
成長は2〜5年かけてゆっくり進みますので、焦らず長い目で見ていきましょう。
将来子どもは持てる?
ホルモン治療の長期継続は精子の産生能力に不可逆的な影響を与える可能性があります。
将来お子さんを望む気持ちが少しでもあるなら、治療開始前に精子の凍結保存をしておくことを強くおすすめします。
凍結しておけば将来的に生殖補助医療を利用できる道が残りますし、養子縁組という選択肢もあります。
途中でやめても大丈夫?
やめることは可能です。
ただし、胸の発達など不可逆的な変化はそのまま残り、肌のやわらかさや体脂肪の分布など可逆的な変化は徐々に元に戻っていきます。
中止を考える場合は、急にやめるのではなく主治医と相談しながら段階的に減量していくのが安全です。
まとめ|焦らず情報を集めて判断する
女性ホルモン注射は、MtFやトランスフェミニンの方にとって、体を自認する性別に近づけるための大きな力になる治療です。
肌がやわらかくなる、胸が育つ、体つきが丸みを帯びてくる――そうした変化が日々の安心感や自己肯定感を高めてくれます。
一方で、声やヒゲはホルモンだけでは変わりにくいこと、血栓などのリスクがあること、生殖機能への影響は不可逆になり得ることなど、知っておくべきこともたくさんあります。
だからこそ、焦らず情報を集め、信頼できる主治医と一緒に、ご自身のペースで一歩ずつ進んでいってください。
この記事が、治療について考えるときの地図のような存在になれたらうれしいです。不安なことがあれば、どうか一人で抱え込まず、専門の窓口に声をかけてみてくださいね。


